会社法 取締役 その4

会社法355条~ 忠実義務

 

・忠実義務(355条)

取締役は株式会社に対し、忠実に職務を行わなければなりません。法令や定款を守って職務にあたります。当たり前と言ってしまえばそれまでの話です。

 

・競業、利益相反行為(356条)

取締役が競業取引、利益相反行為を行う場合、株主総会取締役会設置会社の場合は、取締役会)の承認を得る必要があります。株主総会の承認を得たとしても、会社に対し損害を与えた場合は、任務懈怠責任を負うこととなり、会社への損害賠償が発生します。承認を得た場合であっても、損害賠償責任を免除されるわけではありません。

会社に損害を与えた場合は、背任罪として刑事責任を負う場合もあります。

競業、利益相反行為は下記の通りです。

①取締役が自己又は第三者のために会社と同じ事業内容の取引を行う場合(競業取引)

②取締役が自己又は第三者のために会社と取引を行う場合(利益相反行為

③会社が取締役の債務の保証人となること、その他取締役以外の者との間で会社と取締役の利益が相反する取引を行う場合(利益相反行為

取締役の債務を会社に引き受けさせること、会社が保有する財産を取締役へ贈与すること等、様々な行為が利益相反行為にあたります。

ただし、会社に対して損害を与えないような行為は、利益相反行為には当たらないため、株主総会の承認を得る必要はありません。

ex)取締役が会社に対して無利息・無担保で金銭を貸し付ける、普通取引約款による提携取引を行うこと …など

なお、株主全員の同意が得られている場合、株主総会の承認は不要です。個人経営などの場合で、取締役が100%株式を保有する株主である場合も、承認は不要です。

 

・取締役の報告義務(357条)

取締役は会社に著しい損害を及ぼす恐れのある事実があることを発見した場合、株主へ報告する義務があります。監査役設置会社であれば監査役監査役会設置会社であれば監査役会、監査等委員会設置会社であれば監査等委員会へそれぞれ報告しなければなりません。本規定は指名委員会等設置会社には適用されません。

ある取締役の行為が会社に著しい損害を及ぼす恐れがある場合、他の取締役も報告義務があります。

ex)A取締役の行為が会社に著しい損害を及ぼす恐れがある場合において、B取締役が当該行為を発見した場合は、B取締役にも報告義務が発生します。