会社法 吸収合併等の手続き その4

会社法794条~ 吸収合併等の手続き(存続株式会社等に関する手続き)

 

・吸収合併契約等の備置き(794条)

存続株式会社等は、備置き開始日から吸収合併契約等の効力発生日後6か月まで、吸収合併契約等書類を本店に備え置かなければなりません。

備置き開始日は「吸収合併契約等に係る株主総会の2週間前」「反対株主の株式買取請求権に係る告知日又は公告日」「債権者異議の告知日又は催告日」のいずれか早い日です。

 

・吸収合併契約等の承認(795条)

吸収合併契約等に関する承認は、株主総会の特別決議が必要です。

以下の場合は、取締役は株主総会での説明義務が発生します。

①吸収合併消滅会社又は吸収分割会社から承継する債務の額が承継する資産額を超える場合。

②承継会社等が合併等の対価として交付する株式以外の金銭等より承継する債務額が高い場合。

株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の株主に交付する金銭等が、取得する株式の価額として法務省が定める額を超える場合。

④吸収合併又は吸収分割の際に、承継する資産の中に自己株式が含まれる場合。

①~③に共通する点は、吸収合併等を行うことによって、承継株式会社が損をする場合となります。④は自己株式の取得に係る説明義務です。

 

・存続株式会社等が種類株主発行会社である場合の承認(795条)

存続株式会社等が種類株式発行会社である場合、吸収合併等に係る対価が種類株式であるときは、当該種類株式の株主を構成員とする種類株主総会の特別決議が必要です。ただし、当該種類株式が譲渡制限株式であり、定款に「譲渡に際して種類株主総会の決議を要しない」旨の定めがある場合は、種類株主総会の決議は不要です。

 

・吸収合併契約等の承認を要しない場合等(796条)

通常、吸収合併契約等を行う場合は上記(795条)のように、株主総会の承認が必要ですが、消滅株式会社等が存続株式会社等の特別支配株主である場合には、株主総会の承認は不要です。いわゆる略式手続きの場合です。ただし、消滅会社等の株主又は社員に交付される対価に存続株式会社の譲渡制限株式が含まれる場合であって、存続株式会社が非公開会社であるときには、株主総会の特別決議による吸収合併契約等の承認が必要です。(本来、既存株主の承認がなければ譲渡されないはずの譲渡制限株式が譲渡されることで、既存株主の保有割合が減るためです。)

吸収合併契約等を行うにあたり、承継株式会社等が簡易合併、簡易分割、簡易株式交換の条件を満たす場合にも、株主総会の承認は不要です。(※簡易手続きについて後述)ただし、「承継する資産額より負債額がより多い場合」「承継会社等が非公開会社であり、合併等の対価が譲渡制限株式である場合」には、株主総会の承認を経る必要があります。

※簡易手続き…承継会社等が支出する合併等の対価が承継会社等の純資産の5分の1以下である場合に適用されます。

簡易手続きの要件を満たす場合であったとしても、法務省令で定められた株式数を保有する株主が吸収合併等に先立って反対の意思を示した場合(吸収合併等の公告日から2週間以内に限る)は、株主総会の承認が必要になります。

 

・吸収合併等をやめることの請求(796条の2)

吸収合併等に際し、「吸収合併等が法令若しくは定款違反する場合」又は「消滅会社等若しくは存続株式会社等の財産の状況に照らし、著しく不当な場合」で、存続株式会社等の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、存続株式会社等の株主は存続株式会社等に対し、吸収合併等をやめることを請求できます。ただし、簡易手続きによる場合(株主総会の承認が必要な場合を除く)には、やめることの請求ができません。