会社法 吸収合併等の手続き その5

会社法797条~ 吸収合併等の手続き(存続株式会社等の手続き)

 

・反対株主の株式買取請求(797条)

吸収合併等に反対する株主は、存続株式会社等に対し、自己の保有する株式を公正な価額で買い取ることを請求できます。ただし、簡易手続きによる場合は、株式買取請求はできません。簡易手続きによる場合であったとしても、それが株主総会の承認が必要なときは、株式買取請求ができます。

株式買取請求ができる反対株主の定義は、他の場合と変わりません。

吸収合併等の効力発生日の20日前までに、吸収合併等を行う旨並びに消滅会社等の商号及び住所を通知又は公告をしなければなりません。これは、反対株主の株式買取請求ができない場合であったとしても、行わなければなりません。

 

・債権者の異議(799条)

吸収合併等を行うにあたり、承継株式会社等に対して異議を述べることができる債権者は以下の通りです。

①吸収合併の場合…吸収合併存続株式会社の債権者は異議を述べることができます。

②吸収分割の場合…吸収分割承継株式会社の債権者は異議を述べることができます。

株式交換の場合…株式交換の対価が株式交換完全親会社の株式以外の場合は株式交換完全親会社の債権者は異議を述べることができます。(株式以外を交付する場合、完全親会社の資産が流出するためです。株式を発行するのであれば、会社資産に変動はありません。)

株式交換の場合…株式交換完全子会社の新株予約権社債株式交換完全親会社が承継する場合は、株式交換完全親会社の債権者は異議を述べることができます。

④について補足…完全子会社の新株予約権のみを承継するのであれば、同種の新株予約権を発行するのみで問題ありません。むしろ、完全親会社が同種の新株予約権を発行しなければ、株式の保有割合が100%にならなくなってしまう可能性があります。新株予約権社債を承継する場合は、対価として同種の新株予約権を交付するのみならず、社債(=債務)も承継してしまうため、債権者保護手続きが必要になります。

上記①~④までの異議を述べることができる債権者がいる場合は、債権者保護手続きが必要です。債権者保護手続きの詳細は割愛します。

 

持分会社の手続き(802条)

持分会社が存続会社等となる下記の①~③に定める吸収合併等を行う場合は、効力発生日の前日までに存続持分会社等の総社員の同意が必要です。

①吸収合併…吸収合併消滅株式会社又は持分会社の株主又は社員が吸収合併存続持分会社の社員となる場合

②吸収分割…吸収分割会社が吸収分割承継持分会社の社員となる場合

株式交換により他の株式会社の全株式を取得する場合…株式交換完全子会社の株主が株式交換完全親合同会社の社員となる場合

なお、存続会社等が持分会社である場合であったとしても、当該持分会社は債権者保護手続きを取る必要があります。