会社法 訴訟 その5

会社法847条~ 株式会社における責任追及等の訴え

 

・株主による責任追及等の訴え(847条)

6か月前から継続して株式を保有する株主(非公開会社の場合は、保有期間の要件なし)は、株式会社に対して役員等に対する責任追及や不正利益返還の訴えを起こすことを請求することができます。

株式会社が60日以内に役員等に対する責任追及や不正利益返還の訴えを起こさない場合は、請求を行った株主は自らが原告となって訴えを起こすことができます(60日以上経過しなければ訴えの提起はできません)。ただし、60日の期間内に株式会社に回復することができない損害が生じるおそれのある場合は、原告となる株主は直ちに訴えの提起ができます。

 

・株式会社の役員の解任の訴え(854条)

株式会社の役員がその職務の執行に関し不正行為、法令又は定款違反にあたる重大な事実があったにもかかわらず、株主総会で当該役員の解任を否決する決議が行われた場合若しくは種類株主総会の決議によって解任の決議の効力が生じない場合は、以下の株主は当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができます。(30日を経過してしまうと、訴えの提起はできません)

①総株主の議決権の100分の3を6か月以上保有する株主(ただし、総株主の議決権に「議決権の行使ができない株主」「被告となる役員の議決権」は含まれません)

②発行済株式の100分の3を6か月以上保有する株主(ただし、発行済株式に「自己株式」「被告となる役員の株式」は含まれません)

非公開会社の場合は保有期間の要件がありません。

 

判例(854条)

退任後もなお役員としての権利義務を有する者(以下、役員権利義務者)が不正行為又は法令違反若しくは定款違反にあたる行為を行った場合において、当該役員権利義務者に対して、株主が854条を適用してその解任請求をすることはできません。(最判平成20.2.26)

理由①…854条ではただ単に「役員」と定めており、役員権利義務者を含めていない。

理由②…346条2項には、「裁判所は利害関係人の申立により一時役員の職務を行うべきものを選任することができる」と定められているため、854条ではなく346条にて役員の交代を申し立てるべきである。