民事執行法 強制執行 その1

民事執行法22条~ 強制執行

 

・債務名義(22条)

債務名義とは、文書です。債務者の名義になっている財産ではありません。

債務名義が具体的にどのような文書かというと、債権者が強制執行によって得られる債権の存在や範囲を明らかにした文書(=裁判所が強制執行の許可を出した文書)です。以下のものを指します。

①,確定判決

②,仮執行の宣言を付した判決

③,抗告によらなければ不服を申し立てることのできない裁判

③-2,仮執行の宣言を付した損害賠償命令

③-3,仮執行の宣言を付した届出債権支払命令

④,仮執行の宣言を付した支払督促

④-2,訴訟費用を定める裁判所書記官の処分(書記官が「あなたの負担は〇〇円です。」と定めます。)

⑤,執行証書…公証人が作成した証書で、金銭等(金銭の代替物や有価証券を含む)の支払いを請求するものであり、債務者が強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの

⑥,確定した執行判決のある外国裁判所の判決

⑥-2,確定した執行決定のある仲裁判断

⑦,確定判決と同一の効力を有するもの(裁判上の和解調書や調停調書など)

 

強制執行をすることができる者の範囲(23条)

執行証書以外の債務名義による強制執行は以下の者に対して又は以下の者のためにすることができます。

①債務名義に表示された当事者(当事者=本人=債権者・債務者)

②債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となった場合のその他人

③債務名義成立後の承継人

上記①~③の債務名義の目的物を債務者のために所持する者に対しても強制執行ができます。

ex)債務名義の目的となっている動産甲を占有している債務者Aが動産甲を第三者Bに引き渡し、BはAのために動産甲を占有している場合、Bに対しても強制執行ができます。

執行証書による強制執行も、同様に当事者又はその承継人に対して、若しくはそれらの者のためにすることができます。

 

判例(23条)

権利能力なき社団に対する金銭債権に対する債務名義を有する債権者が当該社団の総有に属する不動産を当該社団のために登記名義人となっている第三者に対して強制執行するためには、当該第三者を債務者とするのではなく、権利能力なき社団を債務者として強制執行しなければなりません。(最判平成22.6.29)

 

強制執行の実施(25条)

強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて行われます。

ただし、「少額訴訟の確定判決」「仮執行の宣言が付与された少額訴訟の判決」「仮執行の宣言が付与された支払督促」は、その正本によって強制執行が行われます。(債務名義でなくても執行可能。)