民事執行法 強制執行 その4

民事執行法32条~ 強制執行

 

・執行文の付与等に関する異議の申立て(32条

執行文の付与の申立てを行うと、裁判所書記官又は公証人が付与を行います。この執行文付与の申立てに対する処分(付与をします又はしませんと決めることを処分と言います)に異議を申し立てることができます。つまり、債権者、債務者のどちらでも異議申立てができます。

裁判所書記官の処分に対してはその書記官が所属する裁判所へ、公証人の処分に対しては、公証役場を管轄する地方裁判所へ申立てを行います。

執行文付与の異議申立についての裁判では、口頭弁論を経ないで行うことができます。なお、この裁判結果に対して不服申立(即時抗告)をすることはできません。

 

・執行文の付与に関する異議の訴え(34条)

条件成就執行文又は承継執行文の付与に対し、異議のある債務者は、強制執行の不許を求めるために、執行文付与に対する異議の訴えを提起することができます。

異議の事由が複数ある場合は、一度に全部主張しなければなりません。ひとつひとつ訴えて先延ばしにしようとしてもダメです。

 

・請求異議の訴え(35条)

債務名義に係る請求権の存在又は内容に異議のある債務者は、債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができます。裁判によらない債務名義(執行証書等)に対しても、同様に請求異議の訴えを提起できます。

ただし、仮執行宣言が付された判決、損害賠償命令、債権支払命令、支払督促であって、確定前のものに対しては請求異議の訴えの提起はできません。これらは、請求異議の訴え以外の方法によって、その効力を失わせることができるためです。(例えば、仮執行宣言が付された判決は上訴することで、その判決の是非を争うことができます。)

 

判例(35条)

公正証書無権代理人の嘱託によって作成されたため、無効である場合、債務者は請求異議の訴えを提起することはできますが、執行文付与に対する異議申立てをすることはできません。(最判昭和32.6.6.)

請求異議の訴えは、債務名義の存在を前提としているため、債務名義のない任意競売(抵当権実行手続)に対して請求異議の訴えを提起することはできません。(最判昭和32.6.6)

強制執行を受けた債務者が、その請求債権について、強制執行を行う権利の放棄又は不執行の合意があったことを理由として裁判所に強制執行の排除を求める場合、執行抗告や執行異議ではなく、請求異議の訴えを提起しなければなりません。(最決平成18.9.11)