民事執行法 債権及びその他の財産権に対する強制執行 その1

民事執行法143条~ 債権執行等

 

・債権執行の開始(143条)

金銭の支払い(金銭債権)や動産の引渡しを目的とする債権(担保権等)に対する強制執行は、執行裁判所の差押命令により開始されます。

(一応、船舶の引渡し債権も含まれるようですが、海事代理士の分野なので割愛。)

 

・執行裁判所(144条)

基本は、債務者の普通裁判籍を管轄する地方裁判所が執行裁判所となりますが、普通裁判籍がない場合は、差し押さえるべき債権の所在地を管轄する地方裁判所となります。

 

・差押命令(145条)

執行裁判所が差押命令を出すときは、債務者に対して債権の取り立てその他処分の禁止、第三債務者に対しては債務者への弁済の禁止をします。

つまり、差押命令の出た債権はそのままの状態で保存されるということです。

差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発され、また、送達されます。差押命令は、債務者、第三債務者へ一方的に送り付けるということです。ただし、差押命令の取消しの申立てができる旨も併せて送達されるようです。裁判所やさしい。

債権の差押えの効力は、第三債務者へ差押命令が送達されたときに生じます。

 

・差押えの範囲(146条)

債権の差押えは、差し押さえるべき債権の全部について、差押えができます。ただし、差し押さえた債権の価額が差押債権者の債権及び執行費用を超えるときは、それ以上の債権を差し押さえることは禁止されています。

 

・第三債務者の陳述の催告(147条)

差押債権者は、執行裁判所への申立てにより、第三債務者に対して、差押えに係る債権の存否その他の事項について、陳述の催告ができます。催告は差押命令の送達から2週間以内です。

 

・差押えが一部競合した場合の効力(149条)

債権の一部が差し押さえられた後に債権の残余部分を超えて差押えがされた場合は、先行事件の差押えの範囲は、債権のすべてに及びます。また、債権のすべてを差し押さえていた場合であって、後行事件の差押えが債権の一部であったときも、後行事件の差押えの範囲は債権全部に及びます。

先行事件、後行事件共に一般債権者であった場合は債権者同士で競合しますが、税務署が国税等の徴収のために差押えた場合は、税金への配当が優先されるようです。残念。