民事執行法 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行

民事執行法168条~ 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行

 

・不動産、動産引渡しの強制執行(168~170条)

原則、不動産、動産引渡しの強制執行においては、執行官が債務者の占有を解いて(取り上げて)、債権者にその占有を取得させる方法で行います。なお、不動産引渡しの場合は、債権者又はその代理人が執行の場所に出頭しない限り、強制執行をすることはできません。

不動産の引渡しの申立てがあった際、執行官は債務者に対して1か月の期限を与えて、明渡しの催告をすることができます。必要な場合は延長もできます。債務者が当該不動産を占有していない場合は、明渡しの催告はできません。執行官は、明渡しの催告を行ったときは、当該不動産の占有移転禁止の旨を標識等で掲示しなければなりません。

三者強制執行の目的物を占有している場合は、債務者の第三者に対する引渡請求権を差押え、債権者が当該引渡請求権の行使を許可する方法によって行います。

 

・代替執行(171条)

代替執行は、債務者が直接行為を行うのではなく、債務者が費用を払って第三者に行わせるという風に、第三者の代替行為によって強制執行の目的を達成する際に行われます。

作為を目的とする債務に対する強制執行では、債務者の費用で第三者に当該行為をさせる方法で行います。

不作為を目的とする債務に対する強制執行では、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のために適当な処分をさせる方法で行います。

作為の具体例として「債務者が費用を払って、家を建てる、動産を運搬する」などが挙げられます。また、不作為の具体例として「債務者が費用を払って、(債務者が壊した)不動産の修繕をする、(債務者が置いた)動産を撤去する」などが挙げられます。

 

・間接強制(172条)

間接強制は、債務者に対して一定期間内に債務の履行をしなければ、債権者へ金銭の支払いを命じる等、債務者を心理的に圧迫し、間接的に履行を強制させる方法です。

執行裁判所が決定で間接強制を命じますが、強制執行を間接強制の方法で行うときは、申立ての相手方を審尋しなければなりません。

また、間接強制によって債務者が債権者に対して金銭の支払いがあった場合、その金銭は債務不履行による損害賠償に充てられます。支払われた金銭が損害賠償額に満たない場合、債権者はさらに損害賠償請求ができます。

 

作為又は不作為を目的とする場合で、代替執行が可能なときでも、債権者が申し立てれば、間接強制の方法によることができます。

また、扶養義務等に係る金銭債権を請求する場合も、例外的に間接強制の方法によることができます。(167条の15)

通常、金銭債権は直接強制の方法で強制執行を行います。