刑法 併合罪

刑法45条~ 併合罪

 

併合罪(45条)

同一人物が犯した、まだ確定判決を受けていない2個以上の罪は併合罪となります。ただし、ある罪が禁錮以上の確定判決を受けた場合、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪に限り、併合されます。

確定判決を受けた後に犯した罪は併合されないということになりますね。

 

・有期の懲役及び禁錮の加重(47条)

併合罪が成立する場合の刑の加重方法は、懲役又は禁錮の最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします。

懲役又は禁錮刑の最長期間は20年です。(12条、13条)

例えば、傷害罪の場合は、15年以下の懲役と定められています(204条)。罪の加重をする場合の計算方法は、2つ以上の傷害罪を犯したときは、15年に最大で7.5年が加算され、22年6か月の懲役が科されるということになります。3つ、4つ、それ以上の傷害罪を犯した場合であっても、22年6か月を超える刑には処されないとなります。

懲役、禁錮の最長期間は20年ですから、加重があった場合でも、30年を超える刑に処されることはないということになります。

 

・1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合等の処理(54条)

1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れる場合は、そのうちの一番重い罪によって処断されます。

 

・観念的競合

1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合、観念的競合の関係にあると言われます。観念的競合が成立する場合は、2個以上の罪名のうち、一番重い罪によって処断されます。54条そのままですね。

ex)職務執行中の警察官を殴った場合、公務執行妨害罪と傷害罪は観念的競合となるため、より罪の重い傷害罪で処断されることになります。

 

・牽連犯(けんれんはん、と読みます)

牽連犯も基本的には観念的競合と同様の考え方です。1個の行為の手段と目的が2個以上の罪名に触れる場合であって、それらが牽連犯であると認められるときは、一番重い罪によって処断されます。

 

・かすがい現象

これは少し難しいので、具体例を挙げます。

AとBに対して殺人を行った場合、A罪とB罪は併合罪の関係にあり、罪が加重されます。しかし、AとBを殺害する目的でAの家に侵入した場合、これは住宅侵入罪(以下、C罪)にあたります。

A罪とB罪のみであれば、ただ単純に加重されるだけですが、AB罪とC罪はそれぞれ牽連犯の関係になります。牽連犯の原則に「1個の行為の手段と結果が2個以上の罪名に触れる場合は、一番重い罪で処断される」とありますので、ABC罪をすべて1個の行為とみなすことになります。

そうなると本来ならAB罪を併合すべきところ、C罪があることで、ABC罪の一番重い刑で処断しなければなりません。殺人罪の一番重い刑は死刑ですので、あまり関係ないかもしれませんが、これが強制性交罪や傷害罪であれば、個別の一番重い刑が適用されてしまいます。強制性交なら20年、傷害なら15年です。併合罪であれば、それぞれ30年又は22年6か月が適用されるはずが、上記例のようなC罪が加わることで加重されずに刑期が短くなることがあります。

C罪が本来併合罪の関係であったAB罪のかすがいとなって、ABC罪を1つの罪とみなすため「かすがい現象」と言われます。(かすがいは木と木をつなぐホッチキス芯のような器具です。)