刑法 放火及び失火の罪

刑法108条~ 放火及び失火

 

・現住建造物等放火(108条)

現に人が居住に使用し、又は現に人がいる建造物、汽車、電車、船舶又は鉱坑に放火し、焼損させた者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処されます。

放火罪は、目的建造物に火を放ち、火が媒介物を離れて目的建造物に燃え移り、独立して延焼する程度に達したときに、既遂罪が成立します。

1つの行為によって2棟以上の建物が焼損した場合であっても、放火罪は1つのみです。なので、別々の独立した行為によって2棟以上の建物が焼損した場合に初めて2つ以上の放火罪が成立するということになります。

 

判例(108条)

マンション内部のエレベーターのかご内で火を放ち、その側壁として使用されている化粧鉄板の表面0.3平方メートルを延焼させた行為は、現住建造物等放火罪が成立します。(最判平成1.7.7)

 

・非現住建造物等放火(109条)

現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、船舶又は鉱坑を放火し、焼損させた者は、2年以上の有期懲役に処されます。

建築物等が自己の所有物であった場合は、6か月以上7年以下の懲役です。ただし、自己の所有物を焼損させた場合であっても、公共の危険を生じなかったときは罰しません。

他人の承諾を得てその他人のみが住む家に放火した場合は、非現住建造物等放火罪が適用されます。

ex)AがBの許可を得てBのみが住むB宅に火を放った場合、Aは非現住建造物等放火罪が成立します。

自分の建物に火を放った場合であっても、公共の危険が生じた場合は、罰せられます。ここでいう「公共の危険」は、不特定又は多数の人の生命、身体又は建造物以外の財産に対する危険と定められています。

 

・差押え等に係る自己の者に関する特例(115条)

自己の所有するものに対する放火であったとしても、それが差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合は、他人の物を焼損したものとして、罰せられます。