刑法 詐欺及び恐喝の罪 その1

刑法246条~ 詐欺

 

・詐欺(246条)

人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処します。人を欺いて財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も同様です。

詐欺の成立には、以下の4点のすべてが満たされる必要があります。

①欺罔行為

②相手方の錯誤

③財物の交付行為

④財物の移転

1つでも欠ける場合は、詐欺罪の未成立、又は未遂となります。

 

判例(246条)

取引を禁止された物品(麻薬や拳銃等)の売買の際であったとしても、欺罔行為により不正に財物を公布させた以上、詐欺罪を構成します。(最判昭和25.7.4)

虚偽内容の申請により、不正に旅券の交付を受けた場合、免状等不実記載罪が成立し、詐欺罪は否定されます。(最判昭和27.12.25)

虚偽内容の申請により、不正に預金通帳の交付を受けた場合、詐欺罪が成立します。(最決平成14.10.21)

虚偽内容の申請により、不正に生命保険証書の交付を受けた場合、詐欺罪が成立します。(最決平成14.3.27)

詐欺罪の成立は、物品の所持自体を保護法益としているため、本来年金証書を担保にすることは無効ですが、債権者の欺罔行為によって年金受給者が年金証書を担保に差し出し、債権者がこれを詐取すれば、詐欺罪は成立します。(最判昭和34.10.24)

自己の銀行口座に誤振込があった場合において、誤振込の事実を知った口座名義人にはこれを銀行に告知すべき信義則上の義務があるため、誤振込の事実を秘匿して預金の払い戻しを請求する行為は、詐欺罪の欺罔行為にあたります。(最決平成15.3.12)

他人名義のキャッシュカードを使用し、ATMから不正に預金の払い戻しを受けた場合、機械に対する欺罔行為は成立しないため、窃盗罪が成立し、詐欺罪は否定されます。(東京高判平成6.9.12)

預金通帳を第三者に譲渡する意図であるのに、これを秘匿し、銀行行員に自己名義の預金口座の開設を申し込み、通帳の交付を受ける行為は、詐欺罪を構成します。(最判平成19.7.17)

いわゆるおれおれ詐欺における一連の欺罔行為は、最終的に金銭の交付を求める行為に繋がるものであるため、詐欺行為の初期段階において被害者に現金交付を求める内容が含まれていないものであったとしても、これが被害者に対して述べた段階で詐欺罪の実行の着手があったと認められます。(最判平成30.3.22)