供託法 供託物払渡手続き その4

供託法 取戻請求権

 

・取戻請求権の消滅要件

供託者が供託を行った後、何らかの事情により供託物を取り戻す(=返してもらう)場合があります。この権利のことを取戻請求権といいます。

取戻請求権は、被供託者が供託の受諾の意思表示を行ったときに消滅します。被供託者のために供託をしているのですから、被供託者が供託物を受け取った場合には、当然に消滅しますよね。

なお、被供託者の払渡請求権が差し押さえられたとしても、取戻請求権は消滅しません。それぞれ別個の独立した権利であるからです。

 

もうひとつ、消滅時効によって取戻請求権は消滅します。これは少し複雑です。

供託者が供託による弁済等の免責を受ける必要がなくなったときから起算して10年後に時効により取戻請求権は消滅します。

 

具体例を挙げます。

AがBに対する賃料債権を受領拒絶を理由に供託した場合、Aは供託により賃料の支払いを免れます。この時点では、Bはいつでも供託金の払渡請求をすることができます。

しかし、Bがいつまでも供託金を受領しない場合、賃料債権が時効により消滅します。債権の消滅時効は、債権者が権利を行使できることを知ったときから5年間です。つまり、弁済期から5年後にAが供託した賃料債権は、消滅時効を迎えます。

賃料債権の消滅時効を迎えた時点で、Aは供託による弁済等の免責を受ける必要がなくなります。この時点から取戻請求権の消滅時効が進行を始めます。

上記例でいうと、賃料債権が消滅時効を迎えてから10年後に取戻請求権は時効によって消滅します。

 

・取戻請求特有の添付書類

取戻請求をする場合、払渡請求書に取戻請求をする権利を証する書面を添付する必要があります。確定判決の謄本や和解調書などがこれにあたります。

ただし、副本ファイルにより取戻請求をする権利があることが明らかな場合は添付を要しません。具体的には、相手方が受領拒絶をした場合です。法務局に受領不受託の通知が届いているため、同じ法務局で手続きをしていれば、権利があるのは明らかです。

錯誤により間違った相手に供託を行ってしまったため取戻請求をしたい場合は、錯誤による供託であることを証する書面を添付しなければなりません。具体的には、被供託者の証明書(間違って供託した相手に書いてもらう)や確定判決の謄本などです。