供託法 弁済供託 その1

供託法 弁済供託の要件

 

・弁済期未到来の家賃、賃料

原則として、弁済期が到来していない債権を供託することはできません。たとえ供託者が家主と目下係争中で、家主が家賃を受領しないことが明らかである場合でも、弁済期が未到来であれば、供託することはできません。

「前月末日」という契約は、前月末日が弁済期です。

「前月末日まで」という契約は、前月の末日までの間の任意の日に支払えばよいです。つまり、前月1日~末日までのいつでも家賃を支払うことができ、受領拒否された時点で供託できます。

 

不法行為に基づく損害賠償債務

不法行為を原因とする損害賠償債務は、損害が発生したときから履行遅滞になります。そのため、債務者が不法行為に基づく損害賠償債務を供託する場合は、不法行為の日から供託の日までの遅延損害金を加えた額を供託しなければなりません。

債務者が不法行為に基づく損害賠償として相当と認める金額と遅延損害金を合わせた金額を提供し、相手方が受領拒否した場合には、それらの合計額を供託することで、債務を免れることができます。これは、たとえ賠償額に争いがある場合であっても変わりません。民法494条の条件を満たせば、供託のときに債権は消滅します。

民法494条…弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をしたときに、その債権は、消滅する。

1,弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。

2,債権者が弁済を受領することができないとき。)

 

・遅延損害金の計算

弁済の提供をしたにも関わらず、相手方が受領拒否をした場合は、弁済の提供をした日以降の遅延損害金は加算されません。弁済の提供を行うことで、弁済の義務は果たしているからです。

これが賃料債権であることを前提に考えると、賃借人が数か月分の賃料を毎月弁済期までに提供し、賃貸人が受領拒否をしている場合には、数か月分の賃料をまとめて供託することも可能です。弁済期までに提供しているので、遅延損害金は発生していません。

ただし、賃借人が弁済期以降に弁済の提供を行った場合は、元本のみの提供では足りず、遅延損害金を加算した額を提供しなければ、供託をすることはできません。遅延損害金部分の提供を行っていないため、弁済の義務を果たしていないからです。