供託法 執行供託 その3

供託法 仮差押えの執行と供託

 

・仮差押え

仮差押え同士が競合した場合の第三債務者は、その債権の全額を供託することができます。あくまで供託することができるのであって、義務供託ではありません。(ただし、仮差押えと差押えが競合した場合は、義務供託になります。)

仮差押えのあとに滞納処分に係る差押えがあった場合でも、第三債務者に供託の義務はありません。この場合も供託することはできます。

なお、上記2パターンの供託は義務供託ではないため、通常の弁済供託にあたります。そのため、第三債務者は債権者(差押債務者)を被供託者として、供託の通知をする必要があります。仮差押えと滞納処分に係る差押えが競合した場合は、徴収職員に対しての事情届も必要です。

 

・仮差押解放金

仮差押債務者が差押えの解除を求めるためには、仮差押解放金の供託をする必要があります。

仮差押債務者が仮差押解放金の供託を証明した場合、仮差押えの保全執行裁判所は、仮差押えを解除しなければなりません。仮差押解放金の供託は金銭に限ります。有価証券を供託することはできません。

 

・仮処分開放金

処分禁止の仮処分を受けた仮処分債務者が仮処分の開放を求めるためには、仮処分開放金を供託する必要があります。

仮処分開放金の供託には一般型と特殊型の2パターンがあります。

一般型は、仮処分債権者が保全執行裁判所へ処分禁止の仮処分を申し立て、執行された場合です。仮処分債務者は、仮処分債権者を被供託者として供託を行います。

特殊型は、仮処分債権者が詐害行為取消権に基づく処分禁止の仮処分を申し立て、執行された場合です。仮処分債務者は、詐害行為取消権の債務者を被供託者として供託を行います。なお、この場合は、詐害行為取消権を行使した債権者は、詐害行為取消権の債務者が取得する還付請求権を差し押さえることになります。

ややこしいので下記に例を挙げておきます。

ex)AはBに対して金銭債権(弁済期到来済)を有していたが、Bがその所有する唯一の資産である土地甲を詐害行為につき悪意のCへ譲渡した。Aの訴えにより、保全執行裁判所は、Cが譲り受けた土地甲に対して詐害行為取消権に基づく処分禁止の仮処分を執行した。CはBを被供託者とする仮処分開放金の供託を行った。AはBが取得する供託金の還付請求権を差し押さえた。