民法 不在者

民法25条~ 不在者

 

・不在者の財産管理(25条~)

そもそも不在者とは、その場にいない人という意味ではなく、本来の住所又は居所を何らかの原因で離脱し、容易には復帰できない者のことを言います。

家庭裁判所は、不在者の利害関係人又は検察官の請求により、不在者のための財産管理人を置くことができます。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも同様です。

 

家庭裁判所が不在者のために管理人を置いた後、不在者本人が新たに管理人を選任した場合、家庭裁判所が選任した管理人の権限は当然には消滅しません。不在者が置いた管理人又は利害関係人、検察官によって管理人の変更を請求しなければ、改任されません。

なお、不在者の生存が明らかである場合には、管理人の任命は不在者本人に任せるべき事項であるため、家庭裁判所は誰の請求によっても、管理にを改任することはできません。

 

不在者の管理人は、「保存行為」と「管理の目的物(権利を含む)の性質を変えない範囲での利用又は改良」であれば、管理人の権限によって行うことができます。ただし、処分行為を行うときは、家庭裁判所の許可が必要です。

家庭裁判所は、不在者の管理人に対し、不在者の財産の中から相当な報酬を与えることができます。

 

・失踪宣言(30条~)

失踪宣言は、本人の利害関係人の請求によって家庭裁判所が行います。検察官は、失踪宣言の請求権限を持ちません。失踪者の家族が本人を待っているのに、国の機関である検察官が勝手に失踪宣言の請求をしたら、残された家族がかわいそうだからです。

失踪宣言の条件は以下の2つです。

①7年間生死が明らかでない場合

②戦争に赴いた者や船舶・飛行機等の事故に遭った者が、その危機が去って1年間生死が明らかでない場合

①の場合は7年間の期間が満了したときに、②の場合は危機が去ったときにそれぞれ死亡したものとみなされます。

 

失踪者が生存することが明らかになったとき、失踪宣言の効力により死亡したとみなされた時と異なる時に死亡したことがあきらかになったときは、家庭裁判所は本人又は利害関係人の請求により失踪宣言を取り消さなければなりません。

失踪が宣言された結果、相続や遺言により失踪者の財産を得た者は、本人の生存につき善意であれば、現存の利益を限度に返還義務が生じます。ただし、悪意の受益者はその全てを返還しなければなりません。

 

善意の受益者から失踪者の財産の譲渡を受けた者は、たとえ失踪者が生存していることが明らかになっても、善意であれば当該財産を確定的に取得し、悪意であれば返還義務が生じます。

 

ex)土地甲を相続人Bが相続した場合で、失踪者Aの生存が明らかになったときは…

失踪者A→相続人B(善意)→譲受人C(善意)…Cは確定的に土地甲の権利を取得する。

失踪者A→相続人B(善意)→譲受人C(悪意)…Cは土地甲をAに返還しなければならない。

失踪者A→相続人B(善意)→譲受人C(善意)→転得者D(悪意)…Dは確定的に土地甲の権利を取得する。

BC間の取引で双方が善意であれば、転得者が悪意であったとしても転得者は、Aの財産を得ることができます。