民法 意思表示 その3

民法95条 錯誤

 

・錯誤(95条)

意思表示に錯誤がある場合、表意者はその意思表示を取り消すことができます。

①意思表示に対応する意思を欠く錯誤

②表意者が法律行為の基礎とした事情についてその認識が真実に反する錯誤

取り消すことができるのは上記①~②のみです。また、②の場合は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、取り消すことができます。つまり、契約書等に書いてあることや誰が見ても当たり前の場合には、認識違いで行った法律行為を取り消すことができるということです。

表意者が重大な過失によって錯誤に落ちっていた場合は、取り消すことができません。ただし、「相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は知ることができたとき」「相手方も表意者と同じ錯誤に陥っていたとき」は取り消すことができます。

錯誤による取消しは、善意無過失の第三者に対抗することができません。

 

「意思を欠く錯誤」とは、意思表示と真意が一致していないことを指します。

1000万円で土地を売却しようと思っているのに契約書には1000円と書いてあった場合は、その契約書には意思が反映されていません。

 

「法律行為の基礎とした事情についてその認識が真実に反する錯誤」とは、意思表示と真意は一致しているものの、意思表示をするに至った事実に間違いがある場合です。

Aが、ある絵画が作家Xの作品であると誤解してBに購入を申し込んだ場合であって、実はその絵画は作家Yの作品であったときは、Aが「この絵画はXの作品であるから購入する」という意思表示が表示されて(相手に伝わって)いることが錯誤取消しの要件です。購入する意思と真意は一致していますが、真実(作家XY)に間違いがあります。

なお、上記例においては、Aが何も言わずに絵画を購入した場合、Bが「AはXの作品を欲しがっているな…」と知ることはできないため、Aは取り消すことができません。

ちなみにBが絵画は作家Yの作品であるにも関わらず作家Xの作品であるとAに告げていた場合、Aは詐欺による取消しを主張することができます。