民法 代理行為 その1

民法99条~ 代理行為

 

・代理行為の要件及び効果(99条・100条)

本人の代理人が本人のためにすることを示して行った意思表示は、本人に対して直接効力が生じます。第三者代理人の相手方)が代理人に対して示した意思表示も同様に本人へ直接効力を生じさせます。

代理人が本人のためにすることを示さないで行った意思表示は、自己(代理人)に対して効力が生じます。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは本人に効力が生じます。

 

・代理行為の瑕疵(101条)

上記が前提となりますが、代理人の意思表示に瑕疵が生じる場合があります。代理人が相手方にした意思表示が錯誤によるものであったり、詐欺や強迫の場合です。また、代理人がある事情について悪意であった又はある事情について善意であっても有過失であった場合も瑕疵ある意思表示となります。

このように代理人が瑕疵ある意思表示をした場合には、その事実の有無は代理人によって決するものとされています。つまり、本人ではなく代理人の状況によって判断するということです。

ただし、代理人が善意であっても、本人が悪意であった場合は、上記の規定は適用されません。もし、本人が悪意でも適用されると、悪意の本人が善意の代理人を任命すれば、本人はやりたい放題になってしまいます。

ついでに、本人が選任したのが代理人ではなく使者である場合、使者の事情は常に無関係となります。使者による意思表示は、使者の善意悪意に関係なく常に本人の状況によって効力を生じさせます。

ex)本人が使者によって動産甲を購入する場合、売主が無権利者であることについて、使者は悪意でも本人が善意であれば、本人は動産甲を即時取得する。

 

判例(101条)

法人の代表者が選任した代理人が、法人のために動産を買い受けたところ、売主が無権利者であった場合、売主の無権利について、法人の代表者に過失があったとしても、代理人が善意無過失であれば、法人は動産を即時取得します。即時取得の要件である善意無過失は、法人においては代表機関により決するべきですが、代表機関が代理人を選任した場合は、代理人について判断すべきとされています。(最判昭和47.11.21)

上記判例は、法人の代表機関による代理人選任の場合です。法人ではなく個人が代理人を選任し、代理人によって動産を購入した場合、売主の無権利について、代理人が善意無過失でも、本人が善意有過失の場合は、即時取得の要件を満たしません。

 

代理人の行為能力(102条)

制限行為能力者代理人として行った行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができません。

成年被後見人等を代理人に選任した場合は、行為能力の制限による取消しは認められないということです。制限行為能力者代理人にする以上、その意思表示について本人は責任を持たなければなりません。

ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人として行った行為は、取消しが認められます。つまり、成年被後見人がその未成年の子の代理人として行った行為は、取消しが認められる、ということになります。