民法 代理行為 その3

民法107条~ 代理行為

 

・代理権の濫用(107条)

代理人が自己又は第三者の利益を図るために代理権の範囲内の行為をした場合、相手方がその目的を知り、又は過失により知らなかったときは、その行為は代理権を有しない者が行った行為とみなされます。

相手方が代理人の代理権限があったことを知っているとき、又は知ることができたときは、本人はその責任を負わないということです。

 

判例(107条)

親権者が子を代理して、子の所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為は、自己又は第三者の利益を図ることのみを目的とする等、親権者が子を代理する権限を著しく逸脱すると認められない限り、代理権の濫用には当たりません。(最判平成4.12.10)

 

・自己契約及び双方代理等(108条)

同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は双方の代理人として行った行為は、代理権を有しない者が行った行為とみなされます。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、代理権が認められます。

代理人と本人の利益が相反する行為も代理権を有しない者が行った行為とみなされます。この場合でも、本人があらかじめ許諾をした行為は、代理権が認められます。

本条の規定は、本人を保護するための規定であるため、あらかじめ本人から許諾が得られている行為を代理する場合は、有効な代理行為となります。(大判大正8.12.26)

 

判例(108条)

契約当事者の一方が相手方に自己の代理人の選任を委任した場合、その委任契約は無効であり、相手方が選任した代理人には、代理権がありません。(大判昭和7.6.6)

登記申請について、同一の弁護士が登記権利者及び登記義務者の双方の代理人になっても、その代理行為は有効です。登記手続きはすでに発生した権利関係の公示を申請するものであり、新たな法律行為を行うものではないためです。(最判昭和43.3.8)