民法 時効 その2

民法145条~ 時効

 

・時効の援用(145条)

時効は、当事者が援用しなければ効力を持ちません。ここでいう当事者とは、消滅時効については、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を指します。

条文に「当事者が援用しなければ、裁判所はこれによって裁判をすることができない」とありますが、これは当事者からの援用がない限り、実際の権利関係と裁判結果が不一致となってしまうから裁判所は何も言えませんよ、ということになります。無関係な第三者は、時効の援用をすることはできません。

 

判例(145条)

時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的、自動的に生じるものではなく、時効が援用されて初めて確定的に生じます。(最判昭和61.3.17)

当事者とは、時効により直接利益を受ける者を指します。取得時効により権利を取得し、消滅時効により権利を制限又は義務を免れる者です。これらの利益を間接的に受ける者は、当事者ではありません。(大判明治43.1.25)

他人のために自己の所有不動産を譲渡担保に供した者は、被担保債権の消滅により利益を受ける点で、物上保証人と異ならないため、当事者として被担保債権の消滅時効を援用することができます。(最判昭和42.10.27)

仮登記担保権(借金の担保として債務者の不動産に「売買予約」や「代物弁済予約」を原因とする所有権移転請求権仮登記)の設定された不動産を取得した第三者は、実質的に担保権の登記と変わらないため、その被担保債権の消滅時効を援用することができます。(最判昭和60.11.26)

後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権が消滅したことにより、自らの順位が上がって配当額が増加することが期待できますが、この配当額の増加は、順位の上昇によってもたらされる反射的利益にすぎないため、後順位抵当権者は、先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効を援用することはできません。(最判平成11.10.21)

被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人のひとりは、全部を自己が取得する旨の遺産分割協議が成立した等の事情がない限り、自己の相続分を限度超えて取得時効を援用することはできません。(最判平成13.7.10)