憲法 司法 その3

憲法81条~ 司法

 

・法令審査権と最高裁判所(81条)

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

 

判例(81条)

裁判官が具体的事件に法令を適用して裁判を行うにあたり、その法令が憲法に適合するかどうかを判断する裁判官は、最高裁判所の裁判官であるか、下級裁判所の裁判官であるかは問いません。(最判昭和25.2.1)

裁判所は、具体的な訴訟事件が提起されないのに、将来を予想して憲法や法律等の解釈に対して、その判断を下す権限はありません。(最判昭和27.10.8)

国会議員の立法上の不作為は、本来憲法上保障されている権利であるにも関わらず、その立法を正当な理由なく長期に渡って怠っていた等の事情がある場合には、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けます。(最判平成17.9.1)

 

・裁判の公開(82条)

裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う。

②裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない

(対審=民事訴訟の「口頭弁論」、刑事訴訟の「公判」のことです。)

(ただし、家事事件は基本非公開です。)

 

判例(82条)

夫婦の同居義務を争う裁判は、実体的権利義務を争うものであるため、公開しなければなりませんが、家事審判法上の手続きにおいて、同居義務の存在を前提として行う同居の時期、場所等の具体的な内容を決める審判は、非公開であっても憲法に違反しません。(最決昭和40.6.30)

憲法82条は、刑事確定訴訟記録の閲覧を権利として要求できることまでも認めたものではありません。(最決平成2.2.16)(刑事確定訴訟記録…刑事裁判の記録で、基本的には誰でも閲覧できますが、プライバシー保護が必要な場合や刑の執行を受けた人の更生が困難になる等の事情がある場合は、非公開とすることができるようです。)

憲法82条は、裁判を原則公開することで裁判が公正に行われていることを保障することを目的としていますが、傍聴の権利を認めるものではありません。また、傍聴者が法廷内でメモを取る自由についてのみ、憲法21条を根拠に保障されますが、メモを取る行為そのものを憲法によって保障するものではないため、メモを取る行為が裁判の円滑な進行を妨げるものであれば、制限又は禁止されます。(最判平成1.3.8)