民事訴訟法 裁判によらない訴訟の完結 その2

民事訴訟法265条~ 和解条項、請求の認諾又は放棄

 

・裁判所等が定める和解条項(265条)

当事者双方が共同して和解の申立てを行った場合、裁判所は事件を解決するために適当な和解条項を定めることができます。「裁判所等が定める和解条項」の申立ては、当事者が別々に申立てるものではなく、書面による共同申立てです。申立書には、和解条項に服する旨を記載しなければなりません。

(裁判所等=裁判所、受命裁判官、受託裁判官をまとめて指しています。)

裁判所等が和解条項の定めた場合、口頭弁論の期日又は相当と認める方法によって、当事者双方へ告知を行います。双方が告知を受けた時点で、和解が調ったものとみなされます。なお、告知前であれば、相手方の同意なしで申立てを取り下げることができます。

 

・請求の放棄又は認諾(266条)

請求の放棄は原告側、請求の認諾は被告側に立った手続きです。これらの手続きを行うと、相手側の言い分をすべて認め、自身の敗訴が確定します。

取下げとの大きな違いは、口頭弁論等の期日に行わなければならないこと、相手方の同意は必要ないことです。なお、請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出し、口頭弁論等の期日に出頭しない場合は、その旨の陳述を行ったものとみなされます。

取下げを行った場合は、一定の条件を満たせば再度同一の訴えを提起できますが、請求の放棄又は認諾を行った場合は、同一の訴えを提起することはできません。すでに確定判決と同一の効力が生じているためです(下記参照)。

 

・和解調書等の効力(267条)

和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、確定判決と同一の効力を有します。

 

判例(267条)

訴訟上の和解の無効を主張する当事者が新たに期日に指定を求めたとしても、それによって和解によって生じた法律関係が直ちに無効となることはなく、別訴にて和解無効の確認の訴えの提起が必要です。(大判大正14.4.24)

訴訟上の和解を錯誤により無効であると主張する当事者が期日の指定を求めた場合、裁判所は期日を指定し、判決にて和解成立の当否を審査しなければなりません。(大決昭和6.4.22)

控訴審で請求の放棄を行うと、第一審の判決も放棄の限度でその効力を失います。(大判昭和14.4.7)

訴訟上の和解の内容である私法上の契約が債務不履行によって解除されたとしても、和解によって終了した訴訟が復活することはありません。(最判昭和43.2.15)