民事訴訟法 証拠 その1

民事訴訟法179条~ 証拠総則

 

・証明することを要しない事実(179条)

裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は証明することを要しません。

 

・自白(179条)

ここでいう「自白」という言葉は、一般的な自白ではなく、民事裁判上の自白です。

民事訴訟で自白は「相手方の主張する自己に不利な事実を認めること」を指します。ある事実について自白が成立した場合、裁判所はその事実に拘束され、当該事実に反して裁判を進めることができません。ただし、相手方が認める場合は、撤回することができます。

 

判例(179条)

裁判上の自白は、自白した事実が真実に合致せず、かつ錯誤に基づくことを証明したときに限り、撤回することができます。(大判大正11.2.2)

当事者の自白した事実が真実に合致しないことの証明がある場合は、その自白は錯誤によるものであったと認めることができます。(最判昭和25.7.11)

消費貸借の借主が貸主主張の金額について、消費貸借の成立を認める陳述をしたとしても、その貸金から利息が天引きされており、かつ両者が利息の天引きの事実を認めている場合、消費貸借は天引き後の金額で成立します。(最判昭和30.7.5)

→AがBに対し100万円の貸金の返却請求を行っている場合において、両者の間で消費貸借の成立及び「利息を20万円天引きされ、実際に交付された金額が80万円であった」旨の事実を認めているときは、80万円について消費貸借が成立しています。

これは、消費貸借契約の成立要件が「消費貸借契約の合意」と「金銭の交付」であるためです。実際に交付された金額が80万円である以上、消費貸借契約は80万円について存在します。

 

・証拠の申出(180条)

証拠の申出は、証明すべき事実を特定して行わなければなりません。証拠の申出は、期日前にも行うことができます。

「証拠の申出」とは、当事者が裁判所に対して特定の証拠の取り調べを求める行為です。つまり、「私が主張する事実はこういったものが証拠になりますので、裁判官さんに審査してください。」と申し立てることです。証拠の申出も攻撃防御方法のひとつですので、時機に遅れて提出すると却下される可能性があります。

裁判官が調べられる証拠を「証拠方法」と呼びます。証拠方法には「証人(人的証拠=人証)」「鑑定人(人証)」「当事者本人(人証)」「文書(物的証拠=物証)」「検証物(物証)」の5つが存在します。

 

判例(180条)

証人尋問に際し、申出人が予納すべき金銭を相手方が予納した場合、裁判所は証人尋問を行っても差し支えありません。この場合、申出人はすでに行われた証人尋問の撤回はできず、裁判所が証人尋問の結果を証拠として採用することは違法ではありません。(最判昭和32.6.25)

証拠の申出は、証拠調べの開始前であれば、いつでも撤回できますが、証拠調べが行われた後は、一方的に撤回することはできません。(最判昭和58.5.26)