民事訴訟法 判決 その3

民事訴訟法247条~ 判決

 

・自由心証主義(247条)

裁判所は、判決をするにあたって、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を斟酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断します。

つまり、民事訴訟では、裁判官の心証によって事実が認定されるという意味です。ただし、自由な心証と言っても恣意的な判決をすることは許されません。あくまで裁判官の専門的技術や能力、経験に基づく合理的なものでなければなりません。

自由心証主義の採用は、刑事裁判においても同様ですが、刑事裁判では自白が唯一の証拠である場合には、有罪にならないという憲法の規定があります。(憲法38条3項)

 

弁論主義とは反対の概念として、職権探知主義があります。職権探知主義では、当事者が主張していない(=弁論していない)事実を証拠とすることができますし、当事者が申し出ていない証拠を職権によって調べ、証拠とすることもできます。弁論主義と職権探知主義の違いは、証拠資料の提出責任が当事者にあるか裁判所にあるかにあります。職権探知主義が採られている裁判においても、判決に関しては、自由心証主義が採用されています。

 

判例(247条)

裁判所は、一方の当事者が提出した証拠調べの結果を相手方の当事者にとっても有利な証拠として採用することができます。(証拠共通の原則・最判昭和23.12.21)

賃貸人が定期建物賃貸借契約に先立つ説明書面の交付をしたことを立証していないにも関わらず、裁判所が公正証書に説明書面の交付をしたとの記述のみを証拠として採用し、説明書面の交付があったとみなすことは、自由心証主義における経験則、採証法則に反します。(最判平成22.7.16)

 

・損害額の認定(248条)

損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難なときは、裁判所は、口頭弁論及び証拠調べの結果から相当な損害額を認定することができます。

すなわち、裁判官の自由な心証により、損害額の認定ができるということにつながります。(損害額の認定には諸説あるようですが、趣旨はこういう意味だと思われます。)