民事保全法 総則

民事保全法1条~ 総則

 

・趣旨(1条)

民事保全とは、民事訴訟の本案の権利の実現するために行う、仮差押えや仮処分のことを指します。

「まだ裁判は確定していないけど、今の状態を維持しておかないと被告(債務者)が勝手に財産を処分しちゃうな・・・。」というときに活躍するのが民事保全法です。

また、仮の地位を定める仮処分では、例えば、労働契約の有無を争う裁判では、裁判に先立って労働契約をないものにしてしまうと、その間に労働者は無給となって困窮してしまいます。労働者としての仮の地位を定める仮処分を行い「一旦仮だけど、給料は支払ってね。」という形にすることで、労働者は安心して裁判を進めることができます。

 

・民事保全の機関及び保全執行裁判所(2条)

民事保全の命令(=保全命令)は、申立てにより、裁判所が行います。

民事保全の執行(=保全執行)は、申立てにより、裁判所又は執行官が行います。

保全命令と保全執行は、申立てにより行われるものであり、裁判所や執行官が職権で行うことはありません。

 

・任意的口頭弁論(3条)

民事保全の手続きに関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができます。口頭弁論を経たときであっても、すべて決定で裁判をします。

民事保全では、あくまで仮差押えや仮処分なので、裁判の結果は判決ではなく、すべて決定です。

 

・専属管轄(6条)

民事保全に関する裁判所の管轄は専属です。

本案の管轄裁判所又は仮差押えをするべき物を管轄する地方裁判所に専属します。ただし、特許権等を争う場合には、特則があります。また、例外的に保全異議事件の場合は、移送されるときがありますが、必ず管轄権のある裁判所へ移送されます。

 

民事訴訟法の準用(7条)

特別の定めがある場合を除いて、民事保全の手続きに関しては、民事訴訟法の規定が準用されます。