民事保全法 仮処分命令に関する手続き その4

民事保全法26条~ 保全異議

 

保全異議の申立て(26条)

保全命令を発した裁判所に対し、債務者は、保全異議を申し立てることができます。債務者が保全異議を申し立てた場合、保全命令に関する裁判を同一の裁判所で改めて審理する、ということになります。

なお、保全異議の申立てには期限はなく、いつでも申し立てることができます。

 

保全執行の停止の裁判等(27条)

保全異議の申立てがあった場合において、保全命令が取り消されることが明らかとなるような事情や保全執行を継続することによって重大な損害が生ずるおそれがある場合が考えられます。この場合、債務者がそれらの疎明をすることで、裁判所は、申立てにより、保全異議の申立ての裁判を開始するまでの間、担保を立てさせ又は担保を立てることを条件として、保全執行の停止又は執行処分の取消しを命じることができます。

簡単にいうと、保全異議の申立てがあった時点で、保全執行を継続することが明らかに間違っている場合に限って、いったん保全執行を止めることができるということです。

裁判所は、保全異議の申立てについての決定において、上記の一時的な措置を取消し、一部変更、認可しなければなりません。

一時的措置、上記決定に対しては、即時抗告をすることはできません。

 

・事件の移送(28条)

裁判は、迅速に進めなければなりません。保全執行の継続、停止に関する裁判は特に迅速に進めるべきでしょう。

そこで裁判所は、保全異議の裁判について、当事者、証人、参考人等の住所やその他の事情を考慮して、必要と認めるときは、申立て又は職権で管轄権を有する他の裁判所へ事件を移送することができます。

 

保全異議の審理(29条)

裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことのできる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができません。保全異議の申立ての裁判は、必ず当事者双方が立会の下で決定がされます。

 

・審理の終結(31条)

保全異議事件の審理は、一定の猶予期間を置いて終結の日を決めますが、口頭弁論又は当事者双方立ち会いの審尋の期日であれば、直ちに終結することができます。

 

保全異議の申立てについての決定(32条

裁判所が保全異議の申立てについての決定においては、保全命令を認可し、変更し、又は取り消さなければなりません。保全異議の申立てを却下するのではなく、あくまで保全命令を認可する決定をします

保全異議を認めた場合、裁判所は、債権者に対して担保を立てさせる又は担保を増額することで、保全執行の実施又は継続の条件とすることができます。

逆に保全異議を認めない場合は、債務者に担保を立てさせることを条件に、保全命令を取り消すことができます。

 

保全異議の申立ての取消し(35条)

保全異議の申立てを取り消すときは、債権者の同意は必要ありません。自由に取り消すことができます。