民事保全法 仮処分命令に関する手続き その5

民事保全法37条~ 保全取消し

 

・本案の訴えの不起訴等による保全取消し(37条)

保全命令を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対して相当と認める一定の期間内(2週間以上の期間が必要)に本案の訴えを提起するように命じ、さらに提起を証明する書面の提出を命じなければなりません。すでに提起がされていれば、提起を証明する書面の提出のみを命じます。

上記の期間内に本案の訴えの提起がなかった場合、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければなりません。

また、上記の書面を提出した後に本案の訴えが取り下げられ又は却下された場合は、書面の提出はなかったものとみなされます。つまり、保全命令は取り消されます。

本案について、民事調停は訴えの提起とみなされませんが、家事調停は訴えの提起とみなされます。ついでに、調停が成立しなかった場合は、一定期間内に本案の提起をしないと保全命令は取り消されます。

 

・事情の変更による保全取消し(38条)

保全すべき権利、権利関係又はその必要性が変更、消滅した場合、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所(どちらでも可)は、債務者の申し立てにより、保全命令を取り消すことができます。上記の事情の変更については、証明までは求められず、疎明で十分です

 

・特別の事情による保全取消し(39条)

保全命令を取り消さなければ、重大な損害が生じるおそれがある等の特別の事情がある場合、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所(どちらでも可)は、債務者の申立てにより、担保を立てることを条件に保全命令を取り消すことができます。こちらも債務者は、特別の事情を疎明する必要があります。

 

保全抗告(41条)

保全抗告は、保全異議又は保全取消しの申立ての裁判に対する不服申立として、債権者と債務者がすることができます。保全抗告ができるのは、送達を受けた日から2週間以内です。

保全命令や保全異議に対して直接するものではありません。あくまで決定に対する不服申立てです。