民事保全法 仮処分命令に関する手続き その3

民事保全法23条~ 仮処分命令

 

・仮処分命令の必要性等(23条)

係争物に関する仮処分命令は、その現状変更により債権者が権利を実行することができなくなるおそれのあるとき又は権利の実行に著しい困難が生ずるおそれのあるときに発することができます。

ex)占有移転禁止の仮処分、処分禁止の仮処分・・・など。

仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係において、債権者に生じる著しい損害又は緊迫の危機を避けるために発することができます。(仮の地位を定める仮処分命令以外の方法で解決が図れることが明らかな場合は、発さないこともできる・・・かも?)

ex)債権者の土地に建物建築を禁じる仮処分、雇用関係紛争における賃金仮払いの仮処分・・・など

仮処分命令は、仮差押命令と同じく、保全すべき権利が条件付き又は期限付きであっても発することができます。

仮の地位を定める仮処分命令は、原則として、口頭弁論又は債務者が立ち会うことのできる審尋の期日を経なければ発することができません。ただし、期日を経ることで仮処分命令の目的を達する事情があるときは、期日を経ることを要しません。

 

・仮処分の方法(24条)

仮処分の方法は、裁判所が債務者に対して一定の行為を命じる又は禁止する、若しくは給付をさせることを命じる方法。または、保管人に目的物の保管させる処分を命じる方法があります。

 

・仮処分開放金(25条)

裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払いを受けることをもってその目的を達することができる場合に限り、債権者の意見を聴いて、仮処分開放金を定めることができます。

債務者は、仮処分開放金を供託した場合、保全執行の停止又は取消しを求めることができます。

仮処分開放金を定めることができるのはあくまで権利に関する仮処分です。権利関係に関する仮処分では、仮処分開放金を定めることはできません。

ex)処分禁止の仮処分は開放金の定め可、仮の地位を定める仮処分は開放金の定め不可

 

・債務者を特定しないで発する占有移転禁止の仮処分命令(25条の2)

不動産については、債務者を特定することが困難な特別な事情がある場合に限り、裁判所は、債務者を特定しないで占有移転禁止の仮処分命令を発することができます。

なお、この占有移転禁止の仮処分命令が執行されたときに、占有を解かれた者は、債務者となります。

あくまで不動産のみです。動産に対する占有移転禁止の仮処分命令は、債務者を特定しなければなりません