民事保全法 仮処分の効力

民事保全法58条~ 仮処分の効力

 

・不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力(58条)

不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の登記の後にされた登記は、仮処分の登記を基にして本登記をする際に、仮処分に対抗できることが登記上明らかな場合を除き、処分禁止の仮処分の登記(それを基にしてする本登記)に対抗することができません。

長かったので簡潔にまとめると「処分禁止の仮処分の登記に後れる登記は、原則処分禁止の仮処分の登記には対抗できない」ということになります。

なお、本来されるべきだった登記(=保全された登記請求権の行使)をする際に処分禁止の仮登記に後れる登記の抹消を同時に申請するときに限り、仮処分債権者(=登記請求権を持つ人)は、単独で申請することができます。

不動産に関する登記請求権であって所有権以外に権利に係る保全仮登記に基づく本登記をする場合も同様の手続きを行います。

 

判例(58条)

処分禁止の仮登記の前に権利取得があったとしても、登記上、処分禁止の仮処分の登記に後れる形で登記されてしまった場合は、仮処分債権者に対抗することはできません。(最判昭和30.10.25)

土地の売買に基づく不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の登記を得た仮処分債権者は、当該売買が無効であったとしても、当該売買により土地を占有し、仮処分を受けた後に取得時効を迎えた場合、時効完成後に債務者が第三者に土地を譲渡したときであっても、処分禁止の仮処分の登記を時効取得による所有権移転登記手続請求権を保全するものとして、当該第三者に対抗することができます。(最判昭和59.9.20)

 

・占有移転禁止の仮処分命令の効力(62条)

占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、債権者は「仮処分命令の執行につき、悪意である占有者」「仮処分命令の執行につき、善意である承継占有者」に対して、明渡し又は引渡しの強制執行をすることができます。

ただし、仮処分債権者は「仮処分命令の執行につき、善意の第三者である占有者」に対しては、当該第三者が善意であることを証明した場合に限り、対抗することができません。

占有移転禁止の仮処分命令の執行がされた後に、当該係争物を占有した者は、その執行がされたことを知って占有を開始したものと推定します。(みなされるのではなく、推定なので、知らなかったことを証明することができるのです。)