刑法 横領の罪

刑法252条~ 横領

 

・横領(252条)

自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処します。自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も同じです。

横領罪には、未遂犯の規定がないため、領得行為が行われた時点(さらに突き詰めれば、領得の意思を持って何らかの行為を行った時点)で既遂となります。

 

判例(252条)

保管を委託された現金の用途が贈賄資金であった場合、不法な目的の資金であり、不法原因給付をした委託者は、受託者に対し返還請求ができないとされていますが、横領罪の構成要件は「自己の占有する他人の物」であるため、受託者がその資金の一部を自己の為に費消したときは、横領罪が成立します。(最判昭和23.6.5)

Aが所有する土地甲につき、Bへの売買を原因とする所有権移転があった場合において、Bへの所有権移転登記がされないまま、さらにAがCに対して土地甲を売却し、Cにおいて所有権移転登記がされたときは、AのBに対する横領罪が成立します。(最判昭和30.12.26)

Aが所有する不動産甲をBに売却したものの所有権移転登記が未了であることを知っているCが、Aに対する債権の代物弁済として不動産甲の所有権移転登記を受けた場合であっても、民法上適法に当該不動産の所有権を取得したものであるため、Cは直ちにAの横領罪の共犯とはなりません。(最判昭和31.6.26)

 

・業務上横領(253条)

業務上自己の占有する他人の物を横領した物は、10年以下の懲役に処します。

(通常の横領より罪が重いです。)

 

・遺失物等横領(254条)

遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の科料に処します。

(本来の持ち主の失くした物を横領した場合に成立します。)