刑法 窃盗及び強盗の罪 その3

刑法 238条~ 事後強盗・強盗致死傷

 

・事後強盗(238条)

窃盗の後、財物を取り返されることを防ぐため、逮捕を免れるため又は罪跡を隠滅するために暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論じます。

 

判例(238条)

窃盗犯人が他人の住居に侵入し、財物を窃取した後、誰からも発見されることなく犯行現場を離れ、ある程度の時間の経過したときは、被害者から財物を取り返され、又は逮捕され得る状況ではなくなったと言えます。その後、犯人が窃盗を目的に再度被害者宅へ戻った際に被害者に発見されたため、逮捕を免れるために行われた脅迫は、窃盗の機会の継続中に行われたものではないため、事後強盗を構成しません。(最判平成16.12.10)

 

・強盗致死傷(240条)

強盗が人を負傷させたときは無期懲役又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処します。

強盗致死傷は、①財物強取の意思②殺害又は傷害の結果の2つが要件です。すなわち、財物強取の意思があれば足り、財物強取が未遂に終わったとしても、殺害又は傷害の結果が生じていれば、強盗致死傷が成立します。

 

判例(240条)

強盗致傷罪は、強盗犯が強盗の機会に人に障害を加えることによって成立し、それが財物強取の手段として行われることを要しません。(大判昭和6.10.29)

財物強取の手段として人を殺害したときは、財物の取得が未遂に終わっても強盗殺人際の既遂が成立します。(大判昭和4.5.16)

 

・他人の占有等に係る自己の財物(242条)

自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物をみなします。

たとえそれが自分のものであったとしても、他人が占有するものに対して窃盗や強盗などを行った際は、犯罪が成立します。