刑法 窃盗及び強盗の罪 その1

刑法235条~ 窃盗

 

・窃盗(235条)

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処します。

窃盗罪の構成要件は、以下の3点であり、1つでも欠ければ窃盗罪を構成しません。

①他人の占有する財物であること

②不法領得の意思があること

③窃取行為があること(=こっそり盗み出す行為があること)

(不法領得の意思=権利者を排除し他人の物を自己の所有物として、その経済的用法の従い利用又は処分する意思)

 

判例(235条)

一時使用のために他人の財物を自らの占有に移すことは、使用窃盗となり、窃盗罪を構成しません。しかし、一時使用の後、その財物を遺棄する意思があった場合には、窃盗罪を構成します。(大判大正9.2.4)

人を殺害した後、領得の意思が生じ、その場で被害者が身につけていた財物を奪取した場合には、被害者が生前占有していた財物の所持は、その死後直後においても、なお継続して保護するべきであるため、その財物奪取行為には、占有離脱物横領ではなく、窃盗罪が成立します。(最判昭和41.4.8)

売店等の店頭にある商品を手にして懐に収めた以上、財物を自己の支配内に移したものと言えるため、たとえ即座に発見され、財物を取り戻されたとしても、窃盗既遂罪を構成します。(大判大正12.4.9)(=商品を備え付けの買物カゴに入れて、万引きをしようとし、レジを通る前に取り押さえられた場合は、未遂です。この場合は、お金を支払わずにレジを通過した時点で既遂です。)

窃盗罪には、不法領得の意思が必要であるから、物を毀損し、又は隠匿する意思を持って他人の支配内に存する物を奪取する行為は、窃盗罪を構成しません。(大判大正4.5.21)