刑法 共犯 その2

刑法61条~ 教唆・幇助

 

・教唆(61条)

人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の罪を科します。教唆者を教唆した者についても同様です。

「教唆者が被教唆者に対して教唆をし、被教唆者が犯罪の実行を決意し、それを実行する。」という一連の流れが必要です。

明示的、暗示的、命令、指示、どのような方法によって教唆をしたかは問われません。

教唆者が教唆をしたものの、被教唆者が実行しなければ、教唆者は処罰されません。

 

判例(61条)

他人の犯罪に対して助言をして加担した者は、その助言が犯意を決定づける動機となった場合は、教唆犯が成立します。ただ単に犯意を強めたに過ぎない場合(実行犯の犯意はすでに決定していた場合)は、従犯が成立します。(大判大正6.5.25)

教唆者を教唆した者も教唆犯となることから、この者を更に教唆した者も教唆者を教唆したものとして、処罰されます。(大判大正11.3.1)

 

・幇助(62条)

正犯を幇助した者は、従犯とします。従犯を教唆した者には、従犯の罪が科されます。

幇助は、幇助者が故意に正犯者を幇助する目的で加担した場合に成立します。

ex)Aが暴行を幇助する意思はあっても、殺人を幇助する意思はなかった場合に、Bに対して凶器を貸与したところ、BがAから借りた凶器を持ってCを殺害した。

上記例の場合、Aには傷害致死の幇助は成立しますが、殺人の幇助は成立しません。

 

判例(62条・正犯と幇助の区別)

数人が強盗又は窃盗の実行を共謀した場合において、強盗又は窃盗の実行者は一部であっても、それ以外の者が見張りを行った等の事実がある場合、見張りを行った者についても、幇助ではなく、強盗又は窃盗の共同正犯が成立します。(最判昭和23.3.16)

 

・身分犯の共犯(65条)

犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加わった者は、その身分がない場合であっても、共犯となります。ただし、身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑が科されます。

 

判例(65条)

村長及び助役が、収入役と共謀の上、収入役が管理すべき金員を横領した場合は、収入役については業務上横領罪が科されますが、村長及び助役は業務上金員を占有すべき身分がないため、通常の横領罪が科されます。(最判昭和32.11.19)

強姦罪は、その行為の主体が男性に限られ、本条による身分によって構成される犯罪に該当されますが、身分のない者であっても身分のある者の行為を利用することによって強姦罪の保護法益を侵害することができるため、女性が男性と共謀し、強姦の犯罪行為に加功した場合、強姦罪の共同正犯が成立します。(最決昭和40.3.30)