刑法 犯罪の不成立及び刑の減免 その3

刑法37条~ 故意

 

・緊急避難(37条)

自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるためにやむを得ず他人の権利を侵害した場合は罰されません。ただし、避難目的の程度を超えるような場合は、情状により、刑の軽減又は免除がされます。

 

判例(37条)

自動車を運転していたAが必要な注意を怠ったため、Bの運転する車をぶつかりそうになり、これを避けるためにCの運転する車に衝突し、Cを致死させた場合には、緊急避難は適用されません。(大判大正13.12.12)

 

・故意(38条)

罪を犯す意思がない行為は、罰されません。

重い罪にあたるべき行為をしたのに、その行為の時に重い罪に当たることを認識していなかった場合は、その重い罪によって処断することはできません。

法律を知らなかったからと言って、罪を犯す意思がなかったとすることはできません。ただし、この場合は情状により、その刑を軽減することはできます。

 

判例(38条)

麻薬所持と覚せい剤所持では、覚せい剤所持のほうが罪は重いですが、犯罪構成要件要素は同一であると言えます。覚せい剤を麻薬であると誤認し、所持していた場合、罪が重い覚せい剤所持罪の故意は欠きますが、罪の軽い麻薬所持罪の故意は成立します。なお、客観的には覚せい剤を所持しているため、覚せい剤取締法によって取り締まりを受け、覚せい剤は没収されます。(最決昭和61.6.9)

自己の行為が刑罰法令により処罰されることを知らず、自らの行為が違法であると認識せずに行為を行った場合は、刑を軽減することができます。したがって、自己の行為に適用される具体的な刑罰法令の規定を知らなかったとしても、その行為が違法であることを認識しながら行った場合には、刑の軽減をすることはできません。(最判昭和32.10.18)