憲法 国民の権利及び義務 その1

憲法 第三章 国民の権利及び義務

 

判例

日本国憲法が定める基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象と解されるものを除けば、国内に在留する外国人にもその保障は及ぶべきものです。そのため、国会議員を選ぶ選挙権を日本国民のみに限っていることは、憲法に違反するものではありません。(最判平成5.2.26)

基本的人権の保障は、権利の性質上許される限り在留外国人にも及ぶものですが、あくまで、外国人在留制度の枠内にて与えられるものと解されます。他方、外国人の在留期間の更新を認めるかどうかについては、法務大臣の幅広い裁量が認められており、たとえ合憲・合法の範囲内で行った行為であったとしても、在留期間の更新を行わないことは、消極的理由として斟酌(しんしゃく)することはできます。したがって、法務大臣が、在留外国人が政治活動をしたことを理由に在留期間の更新を行わなかったことは、裁量権の著しい逸脱又は濫用にはあたりません。(最判昭和53.10.4)

国内の法人に対しても、憲法に定める国民の権利及び義務は性質上可能な限り、適用されるべきものとして解されます。すなわち、会社も国や政党の特定の政策を支持し、推進又は反対する政治的行為をなす自由を有ることとなり、会社が行う特定の政党への政治資金の寄付は、国民個々の選挙権その他の参政権の行使そのものに直接影響を及ぼすものではありません。(最判昭和45.6.24)

税理士会が行う特定の政党への寄付を目的とする特別会費徴収決議は無効です。(最判平成8.3.19)

司法書士会が他の司法書士会との間で業務その他について提携、協力、援助等をすることは、認められるべきであり、他の司法書士会の援助を目的とする負担金(拠出金)の徴収を多数決の原理で決定したとしても、公序良俗に反する等の特段の事情がある場合を除き、会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではありません。(最判平成14.4.25)

未決拘禁者の新聞閲読の自由は、勾留目的及び監獄内の秩序維持が目的であれば、一定の制限が認められます。閲読を許すことにより、監獄内の規律・秩序の維持に放置することのできない障害が生じる等の事情がある場合、監獄の長が未決拘禁者の新聞閲読を認めなかったとしても、適法なものとして是認されます。(最判昭和58.6.22)

就業規則で、男性と女性の定年年齢を差別することは、合理的な理由は認められず、民法90条の規定により無効です。(昭和56.3.24)

雇用の自由を有する企業者が思想・信条を理由として雇用を拒んだとしても、公序良俗違反その他の違反行為とすべきではありません。(最判昭和48.12.12)

私立大学が独自の建学精神又は教育方針から、社会通念に照らして合理的な範囲で学生の政治活動を規律することは認められるものと解され、政治活動を理由に退学処分をしたとしても、学長の裁量の範囲内と認められます。(最判昭和49.7.19)