民法 意思表示 その4

民法96条~ 詐欺・強迫、意思表示の効力

 

・詐欺又は強迫(96条)

詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができます。

相手方に対する意思表示について、第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限りその意思表示を取り消すことができます。

詐欺による取消しは善意無過失の第三者対抗することができません

強迫による取消しは善意無過失の第三者対抗することができます

詐欺による取消しより強迫による取消しのほうが効力が高いのは、詐欺に遭ってしまった表意者にも一定の落ち度があるという点と、強迫による意思表示をした表意者はより保護に値するという理由があります。

 

ex)AがBに土地甲を譲渡し、さらにBがCに土地甲を譲渡した場合

①AのBに対する意思表示がBの詐欺によるものであったときは、Aは土地甲の所有権を確定的に失います。

②AのBに対する意思表示がBの強迫によるものであったときは、Aは土地甲の所有権を回復することができます。

 

詐欺と錯誤による意思表示は、双方の要件を同時に満たす場合があります。その場合、表意者は自らの選択においていずれかの事由による取消しを主張することができます。

 

民法96条による意思表示の取消しの効力は、取消しの意思表示を行う前に利害関係を有するに至った第三者に限って有効です。取消し後に利害関係を有するに至った第三者とは、対抗関係となり、登記がなければ対抗することができません。(大判昭和17.9.30)

詐欺による意思表示の取消しは、表意者が取消し前に利害関係を有するに至った善意無過失の第三者に対抗することはできませんが、当該第三者が取消し後に利害関係を有するに至った場合には、表意者が先に登記を備えていれば、対抗することができます。

 

・意思表示の効力発生時期等(97条)

遠方にいる者への意思表示は、その通知が相手方に到達したときからその効力が生じます。ただし、相手方が正当な理由なく通知の到達を妨げた場合は、通常到達すべきときに到達したものとみなされます。

上記の意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、その効力は妨げられません。

法人に対する意思表示は、その使用人にすれば足ります。意思表示の相手方の勢力範囲に入り、了知可能な状態に置かれたときに意思表示が到達します。(最判昭和36.4.20)

 

・公示による意思表示(98条)

公示による意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときに行うことができます。公示を始めた日から2週間が経過したときに相手方に到達したものとみなされます

ただし、表意者が相手方の所在を知らないことに過失がある場合は、公示による意思表示の効力はありません。

 

・意思表示の受領能力(98条の2)

意思表示の相手方がその意思表示を受けたときに意思能力を有しなかったり、未成年又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもって相手方に対抗することはできません。ただし、法定代理人又は行為能力者となった相手方がその意思表示を知った後は、対抗することができます。

つまり、意思表示を了知できない人に対しての意思表示では「ちゃんと伝えました」と主張することができないということです。なお、条文の通り被保佐人、被補助人には意思表示の受領能力があるとされているため、被保佐人、被補助人に対する意思表示は有効です。