会社法 役員等の損害賠償責任 その6

会社法430条の2~ 補償契約及び役員等のために締結される保険契約

 

・補償契約(430条の2)

通常、役員等が任務懈怠によって第三者に損失を与えた場合は、当該役員等は第三者に対して損害賠償責任を負うこととなります。しかし、懈怠責任を恐れるがあまり、会社経営が振るわなければ元も子もありません。

そこで、会社は、会社が役員等が負うべき損失や第三者との和解金等を支出する契約を交わすことができます。また、役員等が法令違反を疑われた場合に責任の追及に係る費用(防御費用)を支出することができます。

これらの補償契約は株主総会の決議(取締役会設置会社の場合は取締役会の決議)を経た上で交わすことができます。

ただし、通常要する費用を超える範囲や利益相反行為による損失、悪意又は重過失による損失を補償することはできません。

 

・保険契約(430条の3)

役員等賠償責任保険(D&O保険)の契約に関する事項です。

「会社が保険者(保険会社)と締結する保険契約のうち役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が填補することを約するものであって、役員等を被保険者とするもの」(ほぼ原文)

こちらは保険会社との契約となり、契約を行うには株主総会の決議(取締役会設置会社の場合は、取締役会の決議)が必要となります。また、この保険契約は役員等に一方的に利益のある契約となりますが、利益相反行為には当たらない(適用除外)とされます。この契約を利益相反行為とみなせば、保険契約と利益相反行為承認の2回分の決議が必要になってしまい、手続き上の無駄が発生するためです。