会社法 社債 その5

会社法702条~ 社債管理者

 

社債管理者の設置(702条)

会社が社債を発行する場合、弁済の受領、債権の保全、その他社債の管理を行う社債管理者を設置し、その業務の委託しなければなりません。ただし、各社債の総額が1億円以上である場合又は社債権者の保護に欠ける恐れがない場合は設置しなくても良いです。保護に欠ける恐れがない場合とは「ある種類の社債の最低金額で除して得た数が50を下回るもの」とされています。

ex)総額1億円の社債発行について、引き受ける最低金額が100万円の場合、1億÷100万は1000なので、1億円は超えていても社債の最低金額で除して得た数が50を下回らないため、社債管理者の設置が必要となります。

1億円以上の社債発行の場合、社債管理者の設置義務が免除されている理由として、1つの種類の社債を1億円以上引き受けるのは機関投資家等の大口のお客様であるため、保護する必要がないことが挙げられます。小口の社債を引き受けるのは、個人投資家や一般人が多いため、保護の必要が生じます。

 

社債管理者の資格(703条)

社債管理者は、銀行又は信託会社若しくはこれらに準ずるものとして法令に定める者とされています。具体的には農協や信金などがこれに当たります。

 

社債管理者の義務(704条)

社債管理者は社債権者のために公平忠実にその業務を行い、かつ善管注意義務を負います。これらは契約によっても免除することはできません。

 

社債管理者の権限等(705条)

社債管理者は、社債権者のために社債に係る債権の弁済を受け、又は社債に係る債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有します。

「債権の実現を保全」とは、例えば民事保全手続き等によって、会社の債権を仮差押えして、将来的に社債権者の債権を確保できるようにすることです。社債権者の利益になることであれば、社債管理者は社債権者集会の決議を経ないで行うことができます。

社債管理者が弁済を受けた場合、社債権者はその元本や利息の支払いを社債権者に対して請求することができます。社債に係る債権を社債管理者を通して、受領することになりますね。この請求する権利は10年間行使しないと消滅時効によって、消滅します。

社債管理者は、社債発行会社の業務や財産状況を裁判所の許可を得た上で、調査することができます。