民事訴訟法 裁判 その1

民事訴訟法114条 裁判

 

・既判力の範囲(114条)

既判力とは、前の裁判で確定した判決は後の裁判においても、その判決に縛られる効力のことを指します。つまり、前の裁判で確定した内容を後の裁判で争うことはできない、という意味になります。

既判力が生じる基準時間は事実審(その事実があるかないかを判断する裁判のこと。対義語は法律審。)の口頭弁論終結時です。逆に口頭弁論終結後に生じた事由については、後の裁判で争うことができます。例えば、土地使用料の損害賠償請求を容認する判決が確定した場合において、後々その土地が高騰し、損害がさらに膨らんだときは、改めて損害賠償請求の提訴が可能です。

 

既判力は、主文に包含されるものに限り生じます。すなわち、主文に含まれない事項については、既判力は及ばないことになります。

ある裁判で相殺を主張した場合、その相殺の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額に限り既判力が及びます。

 

この「相殺をもって対抗した額」という点に注意が必要です。

例えば、AのBに対する100万円の貸金返還請求に対し、BがAに有する200万円の売買代金債権をもって相殺を主張したとします。しかし、BのAに対する200万円の売買代金債権の存在が認められず、Aの請求を容認する判決が下りた場合、BのAに対する200万円の売買代金債権のうち、既判力が生じるのは200万円のうち100万円のみです。

114条2項の「相殺をもって対抗した額に限り既判力が及ぶ」という部分によって、既判力の及ぶ範囲が示されているためです。

 

判例(114条)

給付訴訟において、勝訴している場合であっても、他に時効の更新や完成の猶予を行う手段がないときは、再度同じ給付訴訟を提訴することができます。(大判昭和6.11.24)

相殺は意思表示を行って初めて効果が生じるものであるため、被告が口頭弁論終結前に相殺適状の債権を有している場合であっても、その意思表示をしていないのであれば、口頭弁論終結後に改めて相殺をもって債務の消滅を請求する訴訟の提起ができます。(最判昭和40.4.2)

所有権に基づく登記請求を容認する判決は、その理由に所有権の有無を確認している場合であっても、所有権の有無に既判力は及びません。登記請求に関する部分が主文であるため、既判力に包含されているのは、登記に関わる部分のみです。(最判昭和56.7.3)