民事訴訟法 訴え その1

民事訴訟法133条~ 訴え

 

・訴え提起の方法(133条)

訴えを提起するには、訴状を裁判所に提出します。

訴状には「当事者又は訴訟代理人」「請求の趣旨及び原因」を明記します。

 

・証書真否確認の訴え(134条)

確認の訴えは、法律関係を証する書面の成立の真否を確認するためにも提起することができます。

 

〇訴えの利益

訴えの利益は「そもそも裁判する意味があるかどうか」、つまり、裁判所が判決を下すことでその紛争が解決するかどうかによって判断されます。判決を下したところで何の解決にもなっていない場合は、訴えの利益を欠くものとして却下されます。

訴えの種類は「給付の訴え」「確認の訴え」「形成の訴え」の3つに分類されます。

 

①給付の訴え

何かをすること又はしないことを相手に求める訴えです。給付訴訟。

所有権移転登記を求める訴え、土地明渡訴訟、騒音を出すことをやめろという訴訟などなど、基本型です。民事訴訟の中で一番多いです。

 

②確認の訴え

権利又は法律関係の存在を確認するための訴えです。確認訴訟。

原則として、単なる事実を確認するのみでは、根本的解決に繋がらないため、権利又は法律関係の確認をすることが求められます。(ex:債務者がする弁済した事実を確認する訴えは、単なる事実の確認なので利益はないが、債務不存在の訴えなら利益がある。)

具体例として「原告Aが土地甲につき、Bに所有権がないことを確認する訴え」は結局土地甲が誰のものになるのか確定しないため、訴えの利益を欠くことになります。しかし、「原告Aが土地甲はAの所有であると確認する訴えをBに対して提訴した場合」は、所有権が確定するため、利益があります。

上記後段の例は「積極的確認の訴え」です。そこに存在することを確認する訴えです。それに対して、上記前段の例は「消極的確認の訴え」です。権利又は法律関係が存在しないことを確認する訴えは、訴えの利益がないことが多いため、原則積極的確認の訴えを提訴することが求められます。しかし、消極的確認の訴えは、人事訴訟(=身分の確認)には利益があります。具体的には「親子関係不存在確認の訴え」です。

 

③形成の訴え

訴えにより新たな法律関係を生じさせるための訴えです。形成訴訟。

株主総会決議取消しの訴訟や養子縁組無効の訴訟などが形成訴訟にあたります。

また、法律関係を形成する上で具体的な要件が定められていないものがあります。上記の株主総会決議取消しの訴えであれば、株主総会の成立要件や議案提出の具体的要件が法律に定められていますが、「土地境界線確定訴訟」や「共有物分割訴訟」などは、法の定めがなく、形式的形成訴訟と呼ばれます。

形式的形成訴訟においては、裁判所は当事者の主張に拘束されず、裁量によって判決を下すことがあります。

 

判例(133条・134条)

執行証書がある場合でも、給付訴訟の提起は訴えの利益を欠きません。(大判昭和18.7.6)

債権者と債務者の間で債権について起訴をしない合意がある場合、この合意に反して起訴された訴えは却下されます。(名古屋高判昭和33.2.27)

遺言者が生きている間にする遺言無効確認の訴えは、訴えの利益を欠いているため、不適法です。遺言者はいつでも遺言の一部又は全部を撤回できるためです。(最判昭和31.10.4)

債務者が債権者に対して、債務不存在確認の訴えを提起している場合において、債権者が債務履行の反訴をしたときは、債務不存在確認の訴えはその利益を失います。(最判平成16.3.25)

被相続人亡Aの相続人がBとCのみであった場合において、BがCに提訴する「特定の財産がCの特別受益財産であることを確認する訴え」は、訴えの利益を欠いています。(最判平成7.3.7)

他方、BがCに提訴する「特定の財産が亡Aのものであることを確認する訴え」は、BとCの相続において、原告の意思に適った利益があるため、訴えの利益があります。(最判昭和61.3.13)

しかし、亡Aの遺産総額から遺贈や生前贈与額等を控除し、残った財産(具体的相続分)を確認する訴えは、相続紛争の根本的解決に繋がらないため、訴えの利益を欠きます。(最判平成12.2.24)