商業登記法 株式会社の登記 その4

商業登記法51条~ 株式会社の登記

 

・本店移転の登記(51条)

本店所在地を他の登記所が管轄する住所に移転した場合は、旧所在地の登記所を経由して新所在地の登記所へ申請します。これらの申請は同時に行わなければなりません。

申請書のみでOKです。委任する場合の委任状以外の書類を添付する必要はありません。

 

・本店移転の登記(52条)

本店移転の登記を旧所在地の登記所で却下する場合は、同時却下です。新所在地の登記所で却下された場合、旧所在地の登記所では却下されたものとみなされます。

新所在地の登記所で登記又は却下されない限り、旧所在地の登記所は本店移転に関する登記をすることはできません。

 

・本店移転の登記(53条)

新所在地の登記所では、会社設立年月日、本店移転した旨と年月日を登記します。

商業登記法 株式会社の登記 その3

商業登記法47条 株式会社の登記

 

・設立の登記(47条)

⑥株主名簿管理人を置いたときは、当該株主名簿管理人との契約書

 

⑦設立時取締役が代表取締役を選任した場合は、これに関する書面

⑧設立する会社が指名委員会等設置会社である場合は、設立時執行役、設立時委員、設立時代表執行役の選定に関する書面

 

⑨創立総会、種類創立総会の議事録

〇定款に本店所在地の記載がない場合は、発起人の過半数の一致によって定めることを要しますが、創立総会において本店所在地を定めた場合は、創立総会議事録を添付して登記申請をすることができます。

 

⑩選任された設立時役員が就任を承諾したことを証する書面

〇発起人の互選、定款の定め等、いかなる場合であったとしても就任承諾書は添付する必要があります。

 

⑪設立時会計参与、設立時会計監査人が就任した場合は「就任を承諾したことを証する書面」「これらのものが法人である場合は、登記事項証明書(同一の登記所の管轄である場合は添付不要。その登記所にあるため。)」「これらのものが法人ではない場合は、社外性を証明する書面」

 

⑫特別取締役の定めがある場合は、特別取締役の選定及び就任を証する書面

商業登記法 株式会社の登記 その2

商業登記法47条 株式会社の登記

 

・設立の登記(47条)

株式会社の設立は、会社を代表すべき者によって申請します。

株式会社の設立に必要な書類は以下の通りです。

①定款…絶対必要です。

〇定款に取締役会を設置する定めがあれば、設立時取締役の過半数で設立時代表取締役を選定した書面を添付します。ただし、取締役会設置の定めがなく、定款による設立時代表取締役の選定の方法が定められていない場合は、発起人の互選で設立時代表取締役を選出したことを証する書面を添付します。

〇定款の認証は、申請する登記所が管轄する公証役場による認証を受けなければ無効となります。

 

②設立時株式を引き受ける者を募集したときは、その引受けの申込み又は総引受け契約を行ったことを証する書面

〇発起設立の場合は使用しません。

〇募集設立するA株式会社の株式申込人がB株式会社であり、B社の代表取締役Cが発起人である場合、Cの行為はB社との利益相反行為になりますが、A社の設立登記の申請には、B社の承諾を得たことを証する書面を添付する必要はありません。A社の設立登記の申請に他社が作成した書面を添付することは不合理であるためです。

 

③定款に変態設立事項の定めがある場合「検査役又は設立時取締役・監査役の調査報告書及び附属書類」「有価証券が出資されたときは、その市場価格を証する書面」「定款に現物出資財産の定めがあるときは、その価額が適正であると検査役の調査を受けたことを証する書面」

〇現物出資財産が500万円を超える場合は、検査役の調査報告書を添付しますが、500万円を超えない場合は、発起人又は設立時取締役・監査役の調査報告書を添付します。

〇定款に変態設立事項の定め、記録がない場合は、上記の書面は必要ありません。

 

④検査役の報告に関する裁判があったときはその謄本

〇検査役が報告を行った裁判所が現物出資財産の価額を変更する決定を行った場合は、当該決定書の謄本を添付して申請する必要があります。

 

⑤発起人による出資及び設立時募集株式の払込を証する書面

〇発起設立の場合は「払込金融機関に払い込まれた金額を証明する書面(設立時代表取締役が作成)」「払込口座の通帳の写し又は金融機関発行の明細書」があれば、発起人による出資金の払い込みを証する書面として添付することができます。振り込みでなくても、通常の入金で問題ありません。ただし、複数名分を一度に入金することはできません。人数分それぞれ入金が必要です。

〇募集設立の場合は、金融機関が発行する「払込金保管証明書」が必要です。

〇払込口座の名義人は、原則発起人ですが、設立時取締役の口座を使うこともできます。その場合、発起人が設立時取締役に受領権限を委任したことを証する書面を添付して申請を行います。

〇払込口座の名義人は、発起人又は設立時取締役でなければなりません。ただし、発起人及び設立時取締役の全員が国内住所がないことが明らかである場合に限り、登記申請時に第三者に対して受領権限を委任したことを証する書面を添付することで、第三者の口座を使用することができます。なお、複数の発起人がいる場合であっても、発起人1名からの委任で足ります。

 

商業登記法 株式会社の登記 その1

商業登記法46条 株式会社の登記

 

・添付書面の通則(46条)

登記すべき事項について、株主若しくは種類株主の総同意又は取締役若しくは清算人の一致が必要な場合は、同意又は一致があったことを証する書面を添付して申請しなければなりません。

同様に、株主総会や取締役会の決議が必要な場合は、その議事録を添付します。ただし、決議があったものとみなされる場合は、議事録ではなく、みなし決議に該当することを証する書面を添付します。

監査等委員会設置会社において、「取締役の過半数社外取締役である場合は、取締役会の決議」又は「取締役会の過半数社外取締役ではない場合は、取締役会の決議と定款の定め」によって、重要な業務決定の委任を受けた取締役の決定による登記を行うときは、「取締役会の議事録」と「取締役の決定を証する書面」を添付します。(定款の提出は不要。会社登記時に提出しているため。)

指名委員会等設置会社において、「取締役会の決議」によって、重要な業務決定の委任を受けた執行役の決定による登記を行う場合は「取締役会の議事録」と「執行役の決定を証する書面」を添付します。

 

同意又は一致が必要な事項は、同意又は一致があったことを証する書面が必要ですが、みなし決議の場合は、同意又は一致があったことを証する書面の添付では、登記ができません。みなし決議に該当することを証する書面が必要です。

 

・先例(46条)

株主総会

株主総会の決議が必要な事項を登記する際において、死亡又はやむを得ない事由で議事録に記名押印ができない取締役がいる場合、それを証する書面を議事録に添付して申請することができます。

株主総会の議事録を複数通作成し、それぞれに取締役が記名押印し、全部合わせれば取締役全員分の記名押印が揃う場合であったとしても、適法な議事録とは言えません。

株主総会議事録にある1名の取締役が記名押印を拒んだ場合、その事情を記載した他の取締役全員又は代表取締役の上申書を添付して申請することができます。

基準日における株主が定時株主総会の議決権者であると定めがある場合において、基準日から定時株主総会の間に新株が発行されていたとしても、基準日時点の有効議決権数を基にした株主総会充足数を満たしているときは、当該株主総会の議事録は有効なものとして扱われます。

1人株主の会社は、当該株主が出席さえしていれば、株主総会は有効に成立しており、招集手続きを行う必要はありません。

(取締役会)

取締役会議事録は過半数の取締役の記名押印があれば、有効です。

取締役の定数が6名である場合において、1名死亡による欠員があったとしても、4名の出席及び賛成があれば、取締役会は有効に成立します。

取締役3名のうち2名が特別利害関係で決議に参加できない場合、残る1名の決議による取締役会議事録は有効です。

電話会議やリモート会議による取締役会であったとしても、決議に必要な取締役が参加し、十分な議論が行えると認められる場合、当該取締役会の議事録は有効です。

商業登記法 未成年者及び後見人の登記 その2

商業登記法40条~ 未成年者及び後見人の登記

 

・後見人の登記とは…

ここでいう後見人登記とは、後見開始の登記ではありません。未成年者の登記と同様、商法上必要となる登記です。後見人が被後見人のために営業を行うために必要となります。しかし、政府の統計上、後見人の登記は、1997年から2020年の間でたった2回しか登記されていないことがわかりました。23年間で2回…、本当に試験に出るのかな…。

 

・後見人登記の登記事項等(40条)

後見人登記の登記事項は以下の通りです。

①後見人の氏名又は名称(法人後見の場合)及び住所並びに当該後見人が成年後見人か未成年後見人のいずれかの別

②被後見人の氏名、住所

③営業の種類

④営業所

⑤数人の後見人がいる場合、それぞれの後見人の権限の行使の方法(個別、みんなで、制限あり等)

 

・申請人(41条)

後見人の登記は原則、後見人によって行います。本人は行いません。

成年被後見人が成年になったことによる消滅の登記及び後見開始の審判が取り消されたことによる消滅の登記は本人によって申請ができます。ただし、成年に達したことによって、未成年後見人が退任した場合であったとしても、職権で消滅の登記を行うことはできないため、申請が必要です。

後見人退任による新後見人の登記は、旧後見人、新後見人いずれの者も申請ができます。

商業登記法 未成年者及び後見人の登記 その1

商業登記法35条~ 未成年者及び後見人の登記

 

・未成年者の登記について…

未成年者が商人として、その営業を行う場合は、登記を行う必要があります(商法5条)。ここでいう未成年者の登記は、未成年後見登記ではありません。

未成年者は原則法定代理人の同意がなければ、売買等の契約行為ができませんが、法定代理人の許可があれば、単独で営業することができます。法定代理人の許可があったことを公示するため、未成年者の登記を行う意味があります。

 

・未成年者登記の登記事項等(35条)

商法5条の規定による登記の登記事項は以下の通りです。

①未成年者の氏名、出生の生年月日及び住所

②営業の種類

③営業所

 

・申請人(36条)

未成年者の登記は、未成年者本人によって行います。

営業許可の取消しによる消滅の登記、営業許可の制限による変更の登記は、法定代理人も申請することができますが、未成年者本人も申請できます。未成年者死亡による消滅の登記は、法定代理人のみしか行うことができません。(本人死んでますし…。)

未成年者が成年に達したことによる消滅の登記は、登記官が職権で行うことができます。ただし、未成年者が婚姻したことによって成年者とみなされた場合、登記官が職権で消滅の登記を行う規定がないため、未成年者が自ら申請する必要があります。

※4月に成人年齢が18歳に引き下げられますが、成人に達したことによる消滅の登記は、出生年月日が登記されてるので、法務局は成人に達したことを確認できますよね。登記官が職権で消滅の登記を行うんでしょうか…?

 

・添付書面(37条)

未成年者の登記を行う際は、法定代理人の許可を得たことを証する書面を添付しなければなりませんが、申請書に法定代理人の記名押印があれば、添付は不要です。

成年後見人が未成年被後見人に対して、営業の許可を出した場合は、未成年後見人の許可を得たことを証する書面が必要です。未成年後見監督人がいる場合は、さらに未成年後見監督人の同意を得たことを証する書面が必要です。いない場合は、未成年後見監督人がいないことを証する書面を添付します。

商業登記法 商号の登記

商業登記法27条~ 商号の登記

 

・商号の登記とは…

会社等の法人登記ではなく、個人事業主の屋号(=商号)を登記することができます。

個人事業主が商号登記をすることで、法人化しなくても代表者や所在地を広く周知することができ、実際に営業を行っている個人事業主であることをお客さんに知ってもらえるメリットがあります。

 

・同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止(27条)

同一住所、同一商号の営業所(法人である場合は本店所在地)を登記することはできません。

この規定は、会社について、たとえ職権で解散登記が行われていた場合であったとしても、清算結了の登記がされていない限り、同一住所、同一商号の登記は不可能です。

 

・登記事項、変更の登記(28条・29条)

商号の登記は、その営業所ごとに行います。また、登記事項に変更があった際には変更の登記を、商号を廃止したときは廃止の登記を行う必要があります。

登記事項は以下の通りです。

①商号

②営業の種類

③営業所

④商号使用者の氏名、住所

 

・商号の譲渡又は相続(30条)

商号の譲渡があった場合は、譲受人が承諾書と商法15条1項に該当することを証する書面を添付して申請します。

相続があった場合は、相続人が相続資格があることを証する書面を添付して申請します。なお、商号は複数人によって相続することが可能です。