会社法 持分会社の計算等 その5

会社法632条~ 合同会社の計算等の特則

 

・出資の払戻しの制限(632条)

持分会社の社員は会社に対して出資の払い戻しを請求することができます。しかし、合同会社の場合は、定款を変更して出資の価額を減少しない限り、出資の払戻請求をすることができません。出資の払戻請求ができる金額は剰余金額又は定款変更により減少した出資の価額のいずれか少ないほうの金額を超えることはできません。

要するに、出資の払い戻しは定款を変更を行った上で出資の価額を減少させ、剰余金となったお金を限度に請求することができるということになります。会社の余っているお金以上の払い戻しをすると債権者を保護できなくなってしまう恐れがあります。

 

・出資の払い戻しに関する責任(633条)

上記632条に違反して払い戻しの業務を執行した社員、払い戻しを受けた社員は連帯して会社へ出資払戻額にあたる金銭を支払う義務があります。業務執行社員は、業務を行うにあたり、注意を怠らなかったことを証明すれば、免責となります。

会社に対する出資払戻額の支払い義務は、原則免除することができませんが、総社員の同意があった場合に限り、払戻日の剰余金額を限度として免除されます。資本金をマイナスにするほどの免除はできないということになります。

 

・社員に対する求償権の制限等(634条)

出資の払い戻しを受ける社員は、払戻日時点の剰余金額を超えて払い戻しを受けたことについて善意である場合には、業務を執行した社員の求償の請求に応じる必要はありません。ただし、会社の債権者は払い戻しを受けた社員に対して、債権額を限度に出資払戻額に相当する金額を払わせることができます。

 

・債権者の異議(635条)

合同会社が持分払戻により、社員へ払い戻される金額が剰余金額を超える場合には、会社の債権者は持分払戻に対して異議を述べることができます。会社の資本金が減少する可能性がある訳ですから、当然の権利です。

会社は剰余金を超えるような払い戻しを行う際には、「剰余金額を超える払い戻しをする内容」「一定期間内(原則最低でも1か月ですが、会社の純資産額を超える場合は最低2か月です。)に異議を申述できる旨」を官報に公告し、債権者へ個別に通知する必要があります。

債権者が一定期間内に異議を述べなかった場合は、承認したとみなされますが、異議を申し立てた場合は、会社は個別に弁済等をする必要があります。

 

・業務を執行した社員の責任(636条)

上記635条に違反して払い戻しの業務を執行した社員は、払い戻しを受けた社員と連帯して、会社に対して払戻相当額を支払う義務があります。業務執行社員は注意を怠らなかったことを証明すれば、免責となります。

総社員の同意があった場合には、払い戻しを受けた社員の支払い義務も剰余金額を限度に免責されます。