民事訴訟法 管轄 その3

民事訴訟法14条~ 管轄

 

・職権証拠調べ(14条)

裁判所は、管轄に関する事項について、職権で証拠調べを行うことができます。

ここで言っているのは「管轄に関する事項」なので、管轄が正しいかどうかを職権で調べることができる、と解釈してよいのでしょうか。もしくは、裁判権の及ぶ範囲において、紛争の当事者同士の事実を調べると解釈すべきでしょうか。人事訴訟であれば、職権証拠調べがなければ、進みませんね。

 

・管轄の標準時(15条)

裁判所の管轄は、訴えが提起された時点を標準として定められます。

つまり、訴えが提起された後に転居した場合であったとしても、訴えが提起された住所地の裁判所が管轄権を有するということになります。ただし、住所地上の管轄違いの裁判所へ提起をした場合であって、被告が当該裁判所の管轄地に住所を移した場合は、矛盾点がなくなることから、管轄違いはなかったことになります。

 

・管轄違いの場合の取り扱い(16条)

裁判所は、訴訟の全部又は一部が自らの管轄に属さないとわかった場合には、正しい管轄の裁判所へ移送しなければなりません。

地方裁判所は、管轄違いの訴訟が簡易裁判所の管轄にあると認める場合であったとしても、相当と認められるときには、自ら訴訟の全部又は一部について、自ら審理することができます。ただし、専属管轄が簡易裁判所にあるときは、審理することはできません。

 

・遅滞を避けるための移送(17条)

第一審裁判所は、その訴訟が自らの管轄にある場合であったとしても、当事者などの裁判に関わる人や物の所在地やその他の一切の事情を考慮して、あまりにも裁判が遅れたり、当事者に負担がかかるときは、申立て又は職権により、他の管轄裁判所へ移送することができます。

 

簡易裁判所の裁量移送(18条)

簡易裁判所は訴訟が自らの管轄に属する場合であったとしても、当事者の申立又は職権にて、訴訟の全部又は一部を管轄する地方裁判所へ移送することができます。

 

・必要的移送(19条)

第一審裁判所は、訴訟が自らの管轄にある場合であっても、当事者から申立及び相手方の同意があるときには、地方裁判所又は簡易裁判所へ移送しなければなりません。ただし、移送することで裁判が著しく遅滞する場合には、移送できません。さらに簡易裁判所から管轄する地方裁判所への移送以外であって、すでに被告が弁論又は弁論準備手続きの申述をしている場合も移送できません。

すなわち、簡易裁判所から管轄する地方裁判所への移送の申立があり、相手方の同意が取れている場合、すでに弁論が行われていたときであっても、簡易裁判所は移送をしなければなりません。

簡易裁判所は、その管轄する住所地の不動産について、被告から移送の申立があった場合は、管轄する地方裁判所へ移送しなければなりません。ただし、被告がすでに本案に弁論を行っている場合には、移送はできません。

 

・専属管轄の場合の移送の制限(20条)

専属管轄がある場合は、移送は制限されます。

 

・即時抗告(21条)

移送の決定又は却下した裁判の決定に対しては、即時抗告ができます。

即時抗告には、決定の一時的な停止の効力があります。即時抗告ができる期間は、民事訴訟法では決定から1週間以内です。

 

・移送の裁判の拘束力等(22条)

移送を受けた裁判は、再移送することができません。ただし、別の事由や移送を受けた裁判で新たに生じた事由の場合には、再移送ができます。

移送の決定を受けた訴訟は、初めから移送された裁判所で行われていたものとみなされます。